家事労働者のための労組が誕生! 世界で5300万人のメイドに朗報か

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世界40カ国以上の労働運動家らが10月26~28日、ウルグアイの首都モンテビデオに集まり、家事労働者(メイド)のためのグローバルな労働組合「国際家事労働者組合総連合」を設立した。家事労働者はこれまで、ほとんどの国で法的保護の適用外とされてきた。だがグローバルレベルの労組が誕生したことで、今後は、家事労働者の組織化や権利の提言などを推進。労働者としての権利獲得に道筋を開きそうだ。

■少女のメイドは9%増

世界には推定5300万人の家事労働者がいる。その大半は女性と少女だ。また外国からの出稼ぎ労働者も少なくない。日本人女性の人口は約6500万人ということを踏まえれば、いかにこの数字が大きいかが実感できる。

国際労働機関(ILO)によれば、世界の家事労働者の約3割は、労働法の保護対象から家事労働者が完全に除外されている国で働いているという。わかりやすくいえば、週休も、労働時間の上限も、最低賃金も、時間外手当も認められないといった環境にある。家事労働者の法的保護を部分的に認める国でも、雇用最低年齢や出産休暇、社会保障、労働衛生措置などは「適用外」というケースが一般的だ。

家事労働者の多くはいまだに著しく低い賃金で、週7日の長時間労働を強いられている。賃金の不払いは日常茶飯事。多くの女性や少女たちは、雇用主の家庭を離れることが許されず、しかも精神的、身体的または性的虐待の犠牲になることすらある。

家事労働者の中で、とりわけ人権侵害のターゲットとなりやすいのは、「住み込み」、「未成年者」、「移民(出稼ぎ)」などの家事労働者だ。海外からの出稼ぎの場合、斡旋業者から搾取されたり、差別に遭ったりするリスクは少なくない。しかも助けてもらおうにも、救済措置へのアクセスが難しいとの実情がある。

また未成年者についてみると、ILOの調べでは、2008~12年の4年間で、家事労働に従事する児童の数は9%増えたという。他の分野の児童労働の数が減っているのとは対照的だ。

■中南米は改善・中東は遅々

ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)によると、過去2年間で25カ国が家事労働者の法的保護の枠組みを改善した。改革が最も進んだのは中南米諸国。一方で、高齢化を背景に家事労働者への依存度が高い欧州連合(EU)諸国や、人権侵害が最もひどい中東・アジア諸国の取り組みは遅れている。

国際家事労働者ネットワーク(IDWN)、国際労働組合総連合(ITUC)、HRWの3団体はこのほど、家事労働者の権利についての状況を国別にとりまとめた報告書「権利の主張:家事労働者の運動と世界で進む労働改革」を発表。このなかで、改革の好事例を紹介した。ポイントは下のとおり。

1)アルゼンチンは2013年3月、週48時間労働、週休制、時間外手当、年次長期休暇、療養休暇、母性保護(母体機能をもつゆえに女性を保護する措置)を定めた。

2)ブラジルは2013年3月に憲法を改正し、同国に650万人と推定される家事労働者に、時間外手当、失業保険、年金をもらえる権利を認めた。また1日8時間労働・週44時間労働を明文化した。

3)ケニアでは2012年12月、家事労働にも労働法が適用されるとの判決が出た。これを受け、最低賃金と社会保障給付が家事労働者にも認められるようになった。

4)フィリピンは2013年1月、家事労働者を雇用する際に契約を結ぶことを義務づけた。また190万人の家事労働者にも、最低賃金、社会保障、公的健康保険を適用する法律を成立させた。さらに、就職斡旋業者と雇用主に対して「斡旋料を請求する行為」を禁じた。

5)スペインは2011年11月、最低賃金や週休・年休、出産休暇、働いていないときも呼び出しに応じる「待機時間」への補償など、家事労働条件を定めた。家事労働者も社会保険制度の対象とした。

6)ベネズエラは2012年、週40時間労働、週休2日、有給休暇、最低賃金を家事労働者にも適用することとした。

これ以外で、ひとつ重要な進展は、「家事労働者条約」が2013年9月5日に発効したこと。この条約は、家事労働者にも、一般の労働者と同じ基本的な労働権を保障する。家事労働者条約をこれまでに批准した国は、ウルグアイ、フィリピン、モーリシャス、ニカラグア、イタリア、ボリビア、パラグアイ、南アフリカ、ガイアナ、ドイツなどだ。