チュニジア人の8割が「国は誤った方向に進んでいる」、アラブの春から3年

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「アラブの春」の火付け役となったチュニジア。あれから3年経った今、政治、経済ともに不安定で、今後の方向性が見えない状況に国民は置かれている。同国の現状を追ってみた。

ベン・アリ前大統領の追放で、チュニジアは、23年にわたった独裁政権に終止符を打った。それ以降、イスラム主義政党アンナハダが中心となって政権を運営してきたが、2013年前半に起きた野党指導者2人の暗殺をきっかけに、反政府デモが頻発。事態を重くみた政府側は8月、議会(制憲国民議会)解散と引き換えに内閣総辞職に合意した。

その後、事実上の内閣不在の状況が3カ月以上続き、ようやく12月14日、前内閣で産業相を務めたジュマー氏が新首相に選出された。これにより、新たな憲法の制定、議会・大統領選挙の2014年実施へ向けて動き出すことになったが、政党が乱立するなか、具体的なプロセスは依然として不透明だ。

■3分の2が現政権に不満

1236人のチュニジア人を対象に10月上旬に実施した世論調査の集計結果を、米国共和党系のシンクタンク共和党国際研究所(IRI)は12月9日、公表した。このなかで回答者の約3分の2が「現政権の政治や経済の活動に不満を抱いている」ことが露呈した。

特に注目すべきは、回答者の79%が「チュニジアが誤った方向に進んでいる」と考えていることだ。この数字は2012年1月の調査の30%から倍以上に増えている。

アラブの春で民主主義に移行できたかどうかについては、36%が「欠陥のある」民主主義だと回答。「完全」または「ほぼ完全」な民主主義としたのは25%にとどまった。34%は、チュニジアはまったく民主主義ではないと答えている。

■「現体制が良い」は53

チュニジアの繁栄を維持した過去の独裁体制と、現在の不安定な民主主義体制のどちらが良いかという設問に対しては、53%が現体制を支持。39%が過去の独裁体制を選んだ。この割合はこの2年間(過去9回)の調査で大きく変わっていない。

また2014年に予定される議会・大統領選挙で、特定の政党と大統領候補者について尋ねたところ、どの政党、候補者も強力な支持を獲得していないことがわかった。

次期選挙で支持する政党については、野党勢力のニダー・チューニス(チュニジアの叫び)が最も高い支持を受けている。それでも支持率はわずか19%。現与党のアンナハダは14%で2位、左派のポピュラー・フロント(人民戦線)が5%で続く。これ以外の政党はいずれも3%以下。回答者の半数近くが「まだ決めていない」という。

大統領候補でトップにつけたのは、ニダー・チューニスのベジ・カイード・エッセブシ氏だ。ただ支持率は17%。次いで、アンナハダのハンマディー・ジバーリー前首相、モンセフ・マルズーキ大統領が6%で並ぶ。誰を支持したらいいのかわからない、と回答者の44%は答えている。

■44%が「家計は悪化している」

チュニジアを悩ます問題は政治の混乱だけではない。高い失業率や国民の低い生活水準といった多くの経済問題も解決されていないことが、この世論調査で浮き彫りとなった。

回答者の大多数が、経済、財政危機、失業を重要な問題としてとらえている。他の関心事として46%が安全保障、25%がテロリズムを挙げた。

生活の苦しさは一目瞭然だ。家族を扶養し、生活必需品を購入するのが困難と答える人の割合は、6月の調査の19%から今回は29%へと跳ね上がった。家計については、36%が「以前より改善された」と感じている一方で、20%が「変化なし」、44%が「悪化した」と考えている。

民主化へのプロセスが停滞気味だった2013年。年末になって辛うじて次期首相は決定したものの、憲法改正など政治問題は依然として山積みだ。チュニジア国民の不満、不安は明らかに高まっている。チュニジアは、今なお混乱が続くエジプトやリビアといったアラブ諸国の民主化の“先導役”でい続けることができるのか。アラブの「本当の春」はまだまだ遠いといえそうだ。