難民は世界で88人に1人と過去最悪、シリア・ベネズエラ・アフガニスタンなど上位5カ国で7割占める

ブルンジ難民コンゴ民主共和国に避難したブルンジ難民の人びと。UNHCRの支援を受け農地に向かう

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は6月16日、紛争や迫害などを理由に強制的に住む場所を移動させられた難民や国内避難民などの統計をまとめた年次報告書「グローバル・トレンズ・リポート」を発表した。難民や国内避難民などの数は2021年末で過去最多の8930万人となった。

8930万人のうち最も数が多いのが国内避難民で5320万人。次いで、難民とベネズエラ人など国外に逃れた避難民3150万人、庇護申請者460万人だ。

グローバル・トレンズ・リポートによれば、1年間の難民などの増加率は前年比8%だ。実数にして700万人に上る。

難民など全体の累計である8930万人は10年前のおよそ2倍。2012年末時点は4270万人だった。

難民などが増えた背景にあるのは、世界各地での紛争の長期化や政情不安だ。世界銀行のデータによれば、2021年時点で激しい紛争を抱える国は世界23カ国。8億5000万人が被害を受けている計算になる。

アフガニスタンでは2021年8月、イスラム主義勢力のタリバンが首都カブールを制圧した。これにより2021年は90万人が新たに故郷を追われた。

またミャンマーでは2021年2月1日に軍事クーデターが起こり、2021年だけで40万人が国内避難民となった。

難民をはじめ国外に逃れた人が累計で最も多いのはシリアで680万人。次いでベネズエラ460万人、アフガニスタン270万人、南スーダン240万人、ミャンマー120万人の順。上位5カ国で全体の69%を占める。

難民をはじめ国外に逃れた人の受け入れ国の8割は低・中所得国だ。2021年はトルコが380万人と最多。以下、コロンビア180万人、ウガンダ150万人、パキスタン150万人と続く。難民をはじめ国外に逃れた人の72%は避難先として近隣国を選んだ。

一方で、国内外から故郷へ戻った帰還民は新型コロナウイルス感染症が拡大する前の水準まで回復した。2021年は43万人と多くはないが、前年の1.7倍に増加。

グランディ国連難民高等弁務官は「国際社会は人類のこの悲劇に対して一丸となって行動を起こさないといけない。さもなければ状況は何も変わらない」と訴える。