弁当が架け橋に! ミャンマー寺子屋のユニークな児童・保護者・先生のトライアングル

寺子屋授業昼休み後元気に授業を受ける子どもたち。この時の授業はミャンマー語

僕の家は貧しいから、これくらいしかできなくて当たり前なんだ−−。ここは、ミャンマー・ヤンゴン郊外にある寺子屋。「貧しさゆえに自分の可能性を狭める児童が多い」と先生たちは頭を悩ませる。児童たちに自信を持たせるにはどうしたらいいのだろうか。

この寺子屋にはユニークな制度がある。多くの児童の保護者は早朝に仕事に行き、弁当を用意できない。弁当を持ってこられない児童は、昼休みに食べるものがない。彼らはそれが恥ずかしく、学校を休みがちになった。そこで、寺子屋の先生たちは保護者に一つの提案をした。「子どもに朝、弁当をもたさず学校に送り出してはどうか」

早朝から仕事をする保護者は昼時には仕事が終わる。日当をもらえるので、その後の時間を使って弁当を作る。出来上がった弁当を自ら子どもにデリバリーする。この制度を導入してからというもの、児童は毎日元気に登校し、一生懸命に勉強する、と先生たちは声をそろえて得意げに言う。

しかし、この習慣を保護者につけてもらうことは容易ではなかった。432人の児童が通うこの寺子屋では、子どもたちの現状を伝えることが必要だが、全ての児童の家庭を訪問することは難しい。そこで2014年に始まったのが3カ月に1回行われる「先生と保護者の定期ミーティング」だ。最初のミーティングでは372人の保護者が出席した。どうして児童が学校に行けなくなったのかなどについて議論し、「お弁当デリバリー」の案を先生らが保護者に提示した。

ミーティングに出席できなかった人には、参加した人が「次回は来てください」と伝え、それでも欠席してしまった人の家庭は訪問した。先生と保護者が定期的に会って意見を交換できる機会を通して、次第に信頼関係を深めていった。

先生と保護者は次第に親しくなっていく。この関係を目にして、児童もそれぞれが持つ悩みを先生に打ち明けるようになった。先生の一人は「実は僕も寺子屋に通っていたんだ。小さな進歩でもいいから、彼らのために少しでも力になりたい」と明かし、児童の悩み相談に乗れることをひそかに喜んでいた。

弁当がつなぐ3者の思いやりの心。児童に愛情を持って真摯に向かい合い、大人が自分たちのために尽力する姿は子どもたちの目に力強く映ったに違いない。信頼できる人がいることは、子どもたちが自分で努力する大きなモチベーションになるのだ。