シャンもラカインもムスリムも! ミャンマーの僧院学校は“スーパー寺子屋”だった

1年生クラス。カメラを向けると体ごと向き直り、はにかんだ笑顔を見せてくれた1年生クラス。カメラを向けると体ごと向き直り、はにかんだ笑顔を見せてくれた

一つの教室に50人以上の子どもたちがひしめき、大きな声で教科書を読み上げる声が響き渡る。ここはミャンマー・ヤンゴン市内のクーラーマ・マーラ僧院学校だ。一見通常の公立小学校と変わらない光景だが、ここには民族・宗教の壁を超えて孤児や貧困層の約400人の子どもたちが集まっている。シャン州の内戦に伴う国内避難民の子ども、ラカイン族、ムスリムと多様だ。

「仏の道に従って、困っている人たちに手を差し伸べる。ただそれだけです。それが異民族・異教徒であることは関係ない」。そう語るのはクーマーラ・ラーマ氏。この学校を創立した僧侶だ。2000年に僧院を立ち上げ、集まった浄財を活用して2009年に身寄りのない子ども9人を預かり、孤児院兼学校であるこの施設を開校した。

現在はボランティアを含む10人の教員、経営に携わる弟子の僧侶たち、多くの寄付者に支えられ400人規模の生徒を迎えている。そのうちおよそ250人は孤児、残りが貧困のため公立学校に通えない子どもたちだ。それぞれに困難を抱えて親らに連れられてやってきた。最近では内戦状態のシャン州から逃れてきた子どもが全体の約8割に達すると言う。

中にはシャン語が母語であるため、ビルマ語の授業についていくのに苦労する生徒もいる。現場の教員は教科を教えるだけでなく、それぞれの事情で心に傷を負って入校してくる子どもたち一人ひとりに目を配り、不安を取り除くことも重要な役割だ。

2年生の英語と算数担当の教員イエン・ティン・ルゥインさん(19)は「科目は公立学校と同じですが、進め方は私たち教員で子どもたちの理解度を見ながら独自の方法をとっています」と説明する。子どもたちは時折不安げな表情を見せることもあり、「みんな純粋で可愛い反面、見ていて心が痛みます。必要としているのは何よりも私たちの愛情です」と話す。

ミャンマーでは公立学校は「一定以上のお金がある家庭の子どもが行くところ」といわれる。放課後に教員が開く補修クラスに参加するのがほぼ必須の慣例となっている。一般的には1レッスン1000円程度、1科目週に1回程度で、これを生徒4~5人の家庭で分担する。それが払えないことは授業についていけなくなることを意味し、学校を続けられない子どもも多い。内戦や貧困など社会的・経済的問題に翻弄され、教育機会を失う子どもが後を絶たない。

ミャンマーでは公教育が必ずしもすべての子どもたちを受け入れる場になりえていない。そんな中、僧院学校はミャンマー社会にとって、困難な状況にある子どもたちにも教育を提供できる最後の砦のような存在になっている。

1年生クラス。国語の授業中で、新しく覚えた言葉を繰り返しノートに練習していた

1年生クラス。国語の授業中で、新しく覚えた言葉を繰り返しノートに練習していた