フィジーが“世界一幸せな国”の理由を考えてみた、「共有」「テキトー」「今」「つながり」の4つがキーワード?

笑顔で撮影に応じるフィジー人女性たち笑顔が弾けるフィジー人女性たち

「フィジー人の幸福度が高いのは、『共有』『テキトー』『今を大切に生きる』『つながり』の4つの習慣が根付いているから」。これは、「世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論」の著者・永崎裕麻氏の持論だ。フィジーは2014年12月、米調査会社ギャラップとWINによる「世界幸福度調査」で1位となった。

■理由1:すべてを共有する

フィジーには、モノやお金などを共有する「ケレケレ」と呼ばれる価値観がある。「フィジー人は自分で所有するという感覚がない。どんなものでも共有する」と永崎氏は話す。驚くべきは共有度の高さだ。

「買い物に行って、レジでお金がないとき、後ろの人に払ってもらうこともあった。フィジー人の共有度が高いのは、モノや経験を多くの人とシェアすることが幸せという考え方を持っているからだ。共有することで、自分の存在価値を確認できるから幸せにつながる」(永崎氏)

■理由2:小さなことは気にしない

フィジー人の性格はとてもテキトーだ。「約束をすっぽかすことはとても多い。車を修理に出し、いつ終わるのかと聞くと『電話する』といわれるが、ほとんどかかってこない」と永崎氏は苦笑する。

「フィジー人がテキトーなのは、成功するか失敗するかは“自分次第ではない”と考えているため。すべては、神の思し召し(フィジー人のほとんどはキリスト教徒)。だから反省しない。でもそのテキトーさが自由や余裕につながっているのではないか」

インタビューに応じる「世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論」の著者である永崎祐麻氏

インタビューに応じる「世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論」の著者・永崎裕麻氏

■理由3:「今」を生きる

フィジー人は「現在」を大切に生きている。「未来のために今を制御することはしない。不安要素の多くは『今』にはない。『過去』と『未来』にある。今にフォーカスすることで不安が解消され、幸せになるのでは」と永崎氏は言う。

その意識が顕著に表れているのが食生活だ。世界統計格付センターの2012年の調査によれば、人口10万人当たりの糖尿病の死亡率でフィジーは世界2位。だがフィジー人女性いわく「健康になるために生きているわけではない」。

■理由4:人とのつながりが多い

人とのつながりも幸せを増やす。助け合いが当たり前に根付くフィジーでは「助け合うことで、自分が必要なんだ、と実感できる。それが幸福につながる」。

フィジー人は、人とつながるのが上手だ。「トイレの個室に入っていても、隣の個室から話しかけられる。間違い電話から長話に発展することもある」と永崎氏。間違い電話から長話に発展したことがあるか、とフィジー人20人に尋ねたところ、4人が「経験あり」だった。

フィジー第2の都市ラウトカには「ザ・ゴールデン・エイジ・ホーム」という高齢者施設がある。だが入居者の9割以上はインド系フィジー人(フィジーの38%はインド系)。フィジー系は1割にも満たないという。その理由について管理人は「フィジー系の場合、家族や友人、村人たちが助けてくれるから」と話す。

■日本人が不幸なのは「選択肢が多いから」?

日本の幸福度は、フィジーがトップに輝いた「世界幸福度調査」で39位だった(対象は65カ国)。経済が発展しているわりに幸福度が低い理由について永崎氏は「選択肢が多すぎるからではないか」と分析する。

「選択肢の多さは、ベストな選択を下すことの難しさを意味する。選んだ後も、失敗すると後悔につながり、ひいては満足度も下がってしまう。選択肢が多いのは発展している証拠だが、その恩恵を享受できるのは自分の軸がはっきりしている人に限られるのでは」

フィジー人にとって人生の選択肢はさほど多くない。就職ひとつとっても「知り合いの紹介でどこかの会社に入ることが多い。選択肢が少なければ、後悔する頻度が少ない」。

もうひとつの理由として永崎氏は「日本人には利他精神が小さいこと」を挙げた。英国の慈善団体「チャリティーエイド基金(CAF)」が発表した「2014年世界寄付指数」で日本は135カ国中90位(フィジーは対象外)。とりわけひどかったのは「見ず知らずの他人を助ける」という項目で、134位とワースト2だった。

「日本人はフィジー人と比べ、人のために動くことが少ない。フィジー人は友人にお金を借りてまで、物乞いに寄付することもある。人の役に立つことで幸せを感じている」(永崎氏)

永崎氏は2年2カ月にわたって約100カ国を周った後、2007年からフィジー第3の都市ナンディで暮らす。現在は語学学校「フリー・バード・インスティテュート」のマネージャーを務める。8年半の生活経験をもとにフィジーの幸福論を本に記した。