ボビー・オロゴンさんが母国ナイジェリアのJICA地域保健プロジェクトを視察、「日本で当たり前のことはどこでもそうじゃない」

おどけた話し方で会場を笑いに包むボビー・オロゴンさん。アフリカの話から少しずつナイジェリアの貧困の話に移る。写真は札幌ドーム内の会議室で撮影

おどけたキャラクターで笑いをとるボビーが一転、真面目な表情で母国の貧困を語る――。

タレントのボビー・オロゴンさん(43)の出身国は西アフリカのナイジェリア。同国最大の都市ラゴスを擁するラゴス州で国際協力機構(JICA)が2014年から実施中の「貧困層のための地域保健サービス強化プロジェクト」の現場を視察したボビーさんはこのほど、JICA北海道が札幌ドームで開催したイベント「ボビーと学ぶアフリカ」で、プロジェクトのおかげからナイジェリアの保健環境は少しずつ改善されてきた、と報告した。

ナイジェリアは、サブサハラ(サハラ砂漠以南の)アフリカで一番の経済規模を誇る大国だが、貧富の格差も大きい。「道路を挟んで、富裕層と地獄のような生活をしている貧困層が隔てられている」とボビーさんは嘆く。日本人のJICA専門家が派遣されているラゴス州のプライマリーヘルスセンターは、貧困地域の住民に母子保健サービスや予防接種、感染症対策、栄養指導など、基本的な保健サービスを提供する。

このセンターを訪問したボビーさんは「日本で当たり前のこと(きちんとした保健医療サービスが提供されること)はどこでもそうじゃない。プロジェクトが始まる前は、マラリアで10人中3人の子どもが亡くなっていた。だけど、(感染症対策として)蚊帳が配られるようになってその数は減ってきた。みんな喜んでいる」と感謝を口にした。

ラゴス州の人口は約2000万人。国内外から多くの人が職を求めて移り住んでいる。しかし、一部の人は家賃が高いなどの理由で、衛生環境の悪いスラムで暮らす。ラゴス州政府と国連児童基金(UNICEF)の調査によると、プロジェクトを始める前の2012年の時点で、スラムはラゴス州に42カ所あり、人口の約70%が暮らしていた。

プロジェクトの実施前の段階で、スラムの住民は保健医療施設をほとんど利用していないことが判明した。主な理由は、施設の存在を知らないこと、施設までのアクセスが悪いこと、お金がないことだ。プロジェクトでは、スラムの住民に対する保健医療の啓発活動やプライマリーヘルスセンターが実施するアウトリーチサービス(現場出張保健サービス)を強化する。プロジェクトの実施期間は2018年5月まで。