サーカスの利益で学校を運営、「ファー」の魅力をカンボジア人元パフォーマーが語る

ソーシャルビジネスとして運営される「カンボジアサーカスファー」の元パフォーマーのカカダさん。現在はスタッフとして汗を流す(カンボジア・シェムリアップ)

サーカスに魅了されて11年――。カカダさん(25)は、カンボジア・シェムリアップで2013年に立ちあがった「カンボジア・サーカス・ファー」(運営:ファー・パフォーミング・ソーシャル・エンタープライズ=PPSエンタープライズ)の元パファーマーだ。2016年に引退し、いまは運営メンバーとしてかかわる。「この仕事に就けて嬉しい」と語るカカダさんに、ファーの魅力を聞いた。

カカダさんがファーを好きな理由は、利益追求だけでなく、社会貢献に力を入れているサーカス団だからだ。ファーは興行で得た利益の71%を、姉妹関係にあるNPO「ファー・ポンルー・セルパク(PPS)」がカンボジア西部のバッタンバン州で運営する芸術学校の運営資金に充てている。この芸術学校はカカダさんの母校でもある。ファー・ポンルー・セルパクとはクメール語で「芸術の光」を意味する。

ファーの入場料は舞台の真正面前列のA席は35ドル(約3550円)、真正面後列のB席25ドル(約2540円)、両サイドのC席18ドル(約1830円)。

PPSの始まりは、タイ・カンボジア国境沿いの難民キャンプで1986年、カンボジア難民の9人の子どもが立ち上げたワークショップ。そのころは、カンボジア内戦の孤児を対象にしていた。現在はバッタンバンに場所を移し、貧しい子どもたちが通う。PPSでは、通常の学校教育(公立校が敷地内にある)のほか、職業訓練コースとして「サーカス」「ダンス」「音楽」「演劇」から自由に選択できる。

ファーは、PPSサーカス学校の卒業生の就職先でもある。カカダさんは「貧しかった自分が職に就けたのは学校でサーカスの技術を学べたから。今はその学校を支える立場となり、サーカスにかかわることができてとっても幸せだ」と語る。

カカダさんは15歳の時、音楽などを学んでいたが、兄がサーカスをしていた影響でパフォーマンスの迫力に心をひかれ、サーカスを始めた。サーカスには「観客を勇気づける力」があるとカカダさん。「観客がパフォーマンスを見て楽しみ、喜び、笑顔になると自分も幸せを感じる。サーカスは幸せを感じあうことができる。パフォーマーにとってそのようなパフォーマンスができることは誇りだ」と23歳からの2年間の現役時代を振り返る。

ファーの公演は現在、シェムリアップで365日毎晩行われる。観客の多くは外国人観光客だ。サーカスが終わった後、カンボジア人の司会者は「より多くの人にファーやPPSのことを知ってほしいから、公演のようすをフェイスブックやインスタグラムなどのSNSで発信してくれると嬉しい」と観客に流暢な英語で語りかけた。

330人を収容できるサーカス小屋。パフォーマーの熱と息遣いが聞こえる距離でのダイナミックなパフォーマンスに息をのむ

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