1着たったの30円⁉ カンボジアの古着屋で働く母「6歳の娘のためにもっと稼ぎたい」

プサールーの最も奥にある古着屋の区画。どの店も古着が山のように積まれているプサールー(ルー市場)の最も奥にある古着屋の区画。どの店も古着が山のように積まれている(カンボジア・シェムリアップ)

カンボジア・シェムリアップ市のプサールー(ルー市場)で古着屋を営むスライ・レーンさん(28)は、長男(10)、長女(7)、次女(6)の3人の子を持つ母親だ。来年から次女が小学校に通うことになるが、「収入は十分ではない。もっと稼ぎたい」と語る。

プサールーは観光客がほとんど訪れない、地元の人たちが集うローカル市場だ。新鮮な肉や魚、野菜などの食料品や生活雑貨を求め買い物にやって来る。所狭しと店が立ち並ぶ市場の中でも最も奥まった場所に古着屋が集まる区画がある。古着の値段はおよそ1.5ドル(約160円)。1000リエル(約0.25ドル、30円ほど)の激安商品もある。「ポアン、ポアン(1000リエル)」と呼びかける大きな声が店内から聞こえる。

古着の多くはプノンペンでリサイクル業者が買い集めたもの。ジーンズやシャツなど洋服の種類ごとにきちんと袋分けされ、古着屋がある区画の倉庫に運ばれてくる。古着が売り切れたら、業者に電話をかけて注文する。100着以上の古着が詰まった大きな袋の値段は1つ100ドル(約1万900円)だ。1袋50ドル(約5500円)のものもあるが、「洋服の質が悪くあまり売れない。100ドルのものを注文することが多い」とスライさんは言う。

スライさんがプサールーで古着屋を始めるまでには、紆余曲折があった。

スライさんは、家族の生活を支えるため中学1年で中退し、焼きそばがウリのレストランでコックとして働いていた。19歳の時に結婚したが、現在夫はタイの工事現場へ出稼ぎしている。1年のほとんどをタイで過ごし、カンボジアの伝統行事の日にも帰れないことはよくある。「夫との連絡は、娘や息子たちと一緒に電話をすることが多い」という。

スライさんは昨年、コックの仕事を辞め、古着屋店を始めた。理由は「コックは大変だったし、子供たちが将来、仕事が見つからなくても働ける店をもっておきたいから」と話す。

古着屋の1日の売り上げはだいたい25ドル(約2700円)。これに仕入れコストなどの経費を引くと、稼ぎはさほど残らない。「夫からの送金と合わせても、収入は不十分。来年から次女(6)が小学校に入ることを考えると、もっと稼ぎたい。子供たちには、特に外国語を学んで、良い仕事に就くチャンスを増やしてほしい」と期待を寄せる。

古着を業者が重そうに倉庫へ運ぶ(カンボジア・シェムリアップのルー市場で)

古着を業者が重そうに倉庫へ運ぶ(カンボジア・シェムリアップのルー市場で)

スライ・レーンさん(28)。カンボジア・シェムリアップのルー市場で昨年から古着店を営む

スライ・レーンさん(28)。カンボジア・シェムリアップのルー市場で昨年から古着店を営む