ケニアで格安の法律文書作成サービス「ウワキリ」誕生! 女性弁護士が立ち上げ

1023名竹さんp2、IMG_0006「ウワキリで法律サービスの充実を目指す」と意気込むアンジェラさん(左から2人目)

貧困層にも法律サービスを充実させたい――。経済成長著しいケニアで、ウェブ上で法律文書を作成できるサービス「ウワキリ」(スワヒリ語で「法律」)が始まった。通常の方法で弁護士に依頼するより格安で、特別な法律知識も必要ない。起業費用の削減や法人・個人の契約などの円滑化につながり、ケニア経済のさらなる活性化が期待される。

■大学進学率0.4

2016年8月にケニアの首都ナイロビで、ウワキリを開設したのは、ケニア出身のアンジェラ・ワンブイ・ワンジョヒさん(29歳)。弁護士として、ケニアや南アフリカの弁護士事務所に勤務したほか、米グーグルでの勤務経験もある。

ケニアでは、国内総生産(GDP)成長率5%以上という経済発展を背景に、商業登記や不動産取引など、法律文書の作成ニーズが増えている。一方で、アンジェラさんによると、高額な弁護士費用が原因で、法律サービスを活用できない国民が多いという。

起業する際の弁護士費用は、企業規模によって異なるが、600ドル(約6万1200円)~1400ドル(約14万2800円)にのぼるという。世界銀行の15年のデータによると、ケニアの1人あたり国民総所得(GNI)は1340ドル(約16万円)。弁護士費用は年収並みの高い費用がかかることになる。

またケニアでは、大学など高等教育機関への進学率は09年の統計によればわずか0.4%。難解な法律文書を理解できる国民は少ない。弁護士に頼らないで文書を自作しても、記載不足が多くて、手続きが進まない。

■利用料は1000円から

ウワキリのサービスはシンプルだ。まず利用者は、ホームページ上に個人のページを作成する。個人ページでは、起業や不動産取引、ローンなどの金融、ルームメイト契約まで、様々な法律文書のサンプルを検索できる。

検索したサンプル文書に、名前や契約期間を記入するだけで、法律文書の原案の作成は可能。その文書をウェブ上に保存すれば、アンジェラさんなど弁護士に確認してもらえる。個別の事案に対応した原案の書き換え方法や、相手側との交渉方法について、アドバイスも受けられる。

利用料は、弁護士に依頼するより格安だ。サンプル文書の検索から原案作成までであれば、必要な費用は平均でわずか約15ドル(約1530円)。利用料は契約文書の種類によって違う。秘密保持契約書は9.38ドル(約970円)、企業間のパートナーシップ協定書は40.09ドル(約4170円)などだ。

M-PESAで貧困層にも

ウワキリの支払いは、携帯電話のSMS(ショートメッセージ)を活用した、ケニア発の送金サービス「M-PESA(エムペサ)」を活用し、銀行口座を持てない貧困層でも利用しやくした。

弁護士費用は高騰し続けている。アンジェラさんは「ケニアの人口の4割近い1830万人が法律文書作成サービスを探している」と推測する。

アンジェラさんは16年10月にDMM. Africa(ディーエムエムドットアフリカ)の斡旋で、日本を訪問。日本の法律家やウェブシステム会社と懇談した。日本企業のビジネスモデルを、ウワキリのサービス拡大に活用できないか模索している。

「今後は東アフリカ全体で8000万人の利用者を目指したい」とアンジェラさん。需要の掘り起こしに向け、利用無制限プランや月額プランなどの導入も検討している。