住民の5割がいまだ電気のない暮らし、プエルトリコを襲ったハリケーンから2カ月

最大風速250キロメートルの風でなぎ倒された電線(プエルトリコ・カロリーナ市)最大風速250キロメートルの風でなぎ倒された電線(プエルトリコ・カロリーナ市)

超大型ハリケーン「マリア」が2017年9月にカリブ地域を襲ってからおよそ2カ月。米誌ニューズウィークによると、人口350万のプエルトリコでは住民の約50%がいまだ電気のない生活を強いられている。電気のない状態はこの先数カ月続くという。

電力不足は生活の隅々に支障をもたらしている。冷蔵庫が使えないため食べ物は腐る。携帯電話は電池がなければ電波も立たない。主都サンフアンの近郊の町カロリーナに住む大学生のクリスティーナ・フェルナンド・リベラさんは「ハリケーンがやってきた後、家族と連絡をとるのに何週間もかかった。今でも電波は不安定だ」と話す。

エアコンや扇風機が使えないのも深刻な問題。プエルトリコの最高気温は11月でも30度はある。「夜はとても寝苦しい。毎晩、汗と虫刺されとの戦いだ」とリベラさんは言う。

浄水施設も電気なしでは稼働しない。きれいな飲み水の不足が感染症を広めている。ハリケーンが上陸してから現在までに、汚い水が体内に入ることで感染するレプストピラ症の疑いは70件以上にのぼる。感染者のほとんどは抗生物質を飲めば回復するが、すでに4人の死者を出した。

レプストピラ症を引き起こすレプストピラ菌とは、ねずみや犬の腎臓に含まれるもの。尿と一緒に排せつされ、数週間にわたり川や土壌を汚染する。主な感染経路は汚染水の摂取や傷口との接触だ。

プエルトリコの住民は現在、レプストピラ菌の温床である川や入り江から水を飲むことを余儀なくされている。「みんな川で水浴びをしている。水たまりの水さえも飲むようになった」と語るリベラさん。ハリケーンによる洪水でレプストピラ菌は広がり、感染の危険性は高まるばかりだ。

このハリケーンは9月20日に5段階のうちカテゴリー4の勢力でプエルトリコに上陸。最大風速は250キロメートル(風速140キロメートルの特急電車の速さのおよそ2倍)。これほどの規模のハリケーンがプエルトリコを直撃したのは80年ぶりだ。ハリケーンはプエルトリコの電力網の80%を壊滅させた。被害額はおよそ50億ドル(約5700億円)にのぼる。

電力の復旧に足かせとなるのは、電力網を管理するプエルトリコ電力公社の膨大な借金だ。その額は約90億ドル(約1兆200万円)といわれる。プエルトリコ政府が抱える全借金の約12%を占め、また国内総生産(GDP)のおよそ1割に匹敵する数字だ。プエルトリコ電力公社は2017年7月に破産を申請している。

プエルトリコはカリブ海に浮かぶ島で、米国の自治連邦区。1917年から住民は米国の市民権を与えられている。島内で自然災害が発生した場合、米政府が復興の主な責任を担う。