セブの“豆腐デザート”を売る青年、ネイルアートをするのは「売り上げのため」

20160915(4)

フィリピン・セブ市のカルボンマーケットを練り歩く「タホ」(豆腐デザート)売りの青年は、爪を緑に塗り、その上にピンクの水玉模様をつけていた。いわゆるネイルアートだ。青年がなぜネイルアートをするのか聞いたところ、意外な答えが返ってきた。

タホは、鉄製のバケツからすくい取り、プラスチックのコップに入れて売る。その際に「爪が汚れていると、客が商品を買ってくれない。だから爪の汚れを見せないように色をつける」のだという。きれいな爪でタホを売る。

日本では、食品を扱う人はネイルアートをしない。しかし、この青年は日本の“常識”とは対照的に、商品をさらに売り上げるため、清潔感を出そうと爪を装飾する。

タホはフィリピンで人気のローカルスイーツだ。朝食の前後、または朝食として日常的に食べられる。タホ売りは店舗を持たず、道や市場で天秤から2つの鉄製バケツを下げて歩き回る。一方のバケツには温かい豆腐が、もう一方には黒糖でできたシロップとタピオカ(キャッサバからとったでんぷん)が入っている。それらを順番に入れ、混ぜるだけ。簡単でヘルシーな食べ物だ。

味は、見た目から予想するほど甘くなく、さっぱりしている。値段は、大きなサイズで20ペソ(約50円)、小さなものだと10ペソ(約25円)。この青年は、300ペソ(約750円)でバケツ一杯のタホを仕入れ、600ペソ(約1500円)で1日およそ50人に売る。

この青年がタホを売っていたカルボンマーケットは、“セブの台所”といわれる、セブ島で一番大きくて有名な市場だ。米国統治時代の1900年代、セブには鉄道が運行しており、カルボンマーケットは蒸気機関車のための石炭(カルボンとは、スペイン語で「石炭」の意)を貯蔵するエリアだった。石炭だけではなくさまざまな物資の取引が行われるうちに市場として成長し、今のような姿になった。(影林紫音)