ボツワナで圧倒的人気なのは中古車! 日本車メーカーの最大のライバルが「日本の中古車」という“皮肉”

レタカネにある中古車販売店。展示車6台中5台が日本車だったレタカネにある中古車販売店。展示車6台中5台が日本車だった

アフリカ南部のボツワナで断トツの人気を誇るのが日本車だ。人口約2万人の地方都市レタカネにあるショッピングセンターの駐車場で車の数を数えてみたら、54台中36台と3分の2が日本車だった。残りはドイツ車14台、アメリカ車3台、韓国車1台。ただボツワナで走っている日本車のほとんどは中古車だ。日本の自動車メーカーにとって、新車を売り込む最大のライバルが日本の中古車という“皮肉な事態”がここボツワナで起きている。

「日本車は安くて手ごろだよ」。ボツワナ人はこう口をそろえる。ここでいう日本車とは輸入された中古の日本車を指す。価格は2万プラ(約20万円)ぐらいから。ボツワナの公務員の初任給(1カ月)は、大卒で約5000プラ(約5万円)、それ以外は約3000プラ(約3万円)なので、日本の中古車の価格はだいたい給料の4~7カ月分になる計算だ。

レタカネで自動車洗車工として働く36歳男性、ヒルトン・モツェメンさんの愛車は中古のトヨタ・カローラだ。「2万3000プラ(約23万円)で買った。新車なら10万プラ(約100万円)以上はする。中古車でも性能が良いからね」と満足そうに話す。

ボツワナ人は、最先端の技術やデザインは重視しない。気にするのは「価格」と「耐久性」だ。警備会社勤務の41歳男性、モーゼス・セサーニさんは「日本車は安いし、長く乗れるでしょ。でもドイツのBMWは耐久性があまり良くない」と違いを力説する。

レタカネ在住の40代の公務員男性、ホイツェオーネ・ディランさんはいま、四駆で4人乗りのピックアップトラックを探している。欲しいのはもちろん中古車だ。新車は高嶺の花。「予算は4万プラ(約40万円)ぐらい。中古車のなかでも日本車がいい」

中古車のメリットは品質だけではない。買うのが簡単という利便性の良さもある。地方の町にも中古車を売る店はあるし、個人輸入するブローカーもいるからだ。対照的にボツワナで新車を手に入れようと思ったら、大都市にあるカーディーラーに行く必要がある。モツェメンさんは「ここレタカネにも、中古車販売店や個人ブローカーはある。でも新車のカーディーラーは、一番近くても車で2時間離れた街セロウェに行かないといけない」と説明する。

日本中古車輸出業協同組合によると、2017年のボツワナ向け中古車輸出台数(予測)は9338台(ボツワナの人口は約200万人)。全世界で23位、アフリカでは5位にランクインする。アフリカ1位のケニアへの輸出台数は7万2594台(人口は約4700万人)だが、両国の人口を勘案すると、ケニアが約600人当たり1台なのに対し、ボツワナは約200人当たり1台。ボツワナでは中古車のことを「ブランドニュー(真新しい)ではないが、ニューカー」というが、ボツワナは隠れた“中古日本車大国”になっている。

調査したレタカネのショッピングセンターの駐車場。型の古い日本車が多い

調査したレタカネのショッピングセンターの駐車場。型の古い日本車が多い

ボツワナの首都ハボロネにあるカーディーラー。日本のディーラーのようにセールスマンがいて、整備工場も併設されている

ボツワナの首都ハボロネにあるカーディーラー。日本のディーラーのようにセールスマンがいて、整備工場も併設されている