月謝は120円! ミャンマーの習い事教室「ティンダン」は貧困脱出の手段となるか

IMG_1061ヤンゴン市北部のノースオカラッパ地区には貧しい家庭が多い。リングワ・ワークショップは若者に英語を教えている

ミャンマー・ヤンゴンではここ最近、仕事に直結するスキルを学べる「ティンダン」の人気が高い。ヤンゴンの中心部から、車で1時間ほど北上したところにあるノースオカラッパ地区では、地元のティンダン(習い事教室)に通って英語力を身につけ、給料の高い仕事に就いたミャンマー人も少なくない。ティンダンは貧困から抜け出す手段となりうるのか。

ヤンゴン市内のノースオカラッパ地区にあるリングワ・ワークショップという塾は、英語や中国語を約200人に教えている。月謝は1500チャット(約120円)と低く抑えられているので、地元の貧しい家庭の出身者でも無理なく通うことができる。

タンシュエさん(25歳)は18歳の時から2年間この塾で学び、今はここの教師として子どもや若者に英語を教えている。「ミャンマーでは待遇の良い仕事を得るためには、それに直結したスキルを持っていることが重要だ」と語る。たとえ大学を卒業した高学歴の若者でも、学歴だけでは就職できないため、公教育以外の場で専門スキルを身につけようと努力するという。

一方で、学歴が高くなくてもスキルを身につければ、そのスキルを生かしてより良い仕事に就くことができる、という側面もある。そのため貧しい家庭の多いノースオカラッパ地区では、多くの若者がリングワ・ワークショップなどのティンダンに通い、日々勉強を重ねている。

リングワ・ワークショップを卒業した人たちの働き口はさまざまだ。身につけた英語力を生かし、翻訳家や通訳、旅行ガイドなどとして活躍する人もいる。平均月収が12万チャット(約1万円)といわれるミャンマーで、翻訳家や通訳は20万~50万チャット(1万7000~4万円)、旅行ガイドは200万チャット(約17万円)を稼ぐ。有名なガイドになれば500万チャット(約40万円)の金額を手にすることも可能だという。医者になるのは難しいとしても、貧しい家庭出身者が高い給料をもらえる仕事に就くチャンスを手に入れられるのがティンダンだ。

「卒業生の中には、海外で働く人もいるよ」とタンシュエさんは言う。ドバイやマレーシア、シンガポールなどが人気で、空港やホテルの受付などとして働く人が多い。

興味深いのは、国内に比べて給与水準の高い仕事に就いたにもかかわらず、数年から10年後には地元に戻り、起業したり店を開いたりする人が多いことだ。「海外で稼いだ人たちも最終的には地元に帰り、その資金を元手にビジネスを始める。そうやって新しい雇用を生み出し、ローカル経済に貢献している」とタンシュエさん。ミャンマー人は、地元への愛着が強く、たとえ都会や海外に出て、給与の高い仕事に就いたとしても、最終的には地元に戻ることが多いのだという。

リングワ・ワークショップで英語を教える彼自身も、「自分はこの学校にチャンスをもらったから、今度は自分もチャンスを与える側になりたいと思って英語を教えている。これは僕の使命」と語る。ティンダンで学び、より良い仕事を得て、地元に恩返しをする――こんなサイクルが、貧しい地域の発展につながっていくのかもしれない。

英語教師のタンシュエさんは「英語を教えることは僕の使命だと感じる」と語る

英語教師のタンシュエさんは「英語を教えることは僕の使命だと感じる」と語る