「シアバター」がブルキナファソの乳幼児を救う!? 神戸のNGOフューチャーコードがハンドクリームを今秋発売へ

NGO「Future Code(フューチャーコード)」の事務局長を務める水沼里恵さんNGO「Future Code(フューチャーコード)」の事務局長を務める水沼里恵さん。神戸市内のオフィスで撮影

「シアバターで、西アフリカ・ブルキナファソの子どもの命を救いたい」。こう語るのは、神戸に拠点を置く日本のNGO「Future Code(フューチャーコード)」の水沼里恵事務局長だ。ブルキナファソ産のシアバターを使ったハンドクリームを作り、今秋から日本で販売する計画。その収益で浄水装置を購入し、ブルキナファソの首都ワガドゥグ郊外の農村の井戸水をきれいにし、5歳未満児の死亡率を減らすのが狙いだ。

下痢は子どもの死因2

シアバターとは、西アフリカから中央アフリカに生息するシアの木の実から採れる植物性油脂のこと。古くから、紫外線から肌を守ったり、火傷の塗り薬として使われたりしてきた。近年は肌や髪をうるおしたり、乾燥から守ったりといった美容効果に注目が集まっている。

ハンドクリームの材料になるシアバターは、ワガドゥグ郊外のサポネ地区の農園で作る。ここで働くのは105人の女性たちだ。1日の賃金は1500セーファーフラン(約300円)と、ブルキナファソの最低賃金1050セーファーフラン(約210円)を約1.4倍上回るという。

水沼さんは「フューチャーコードが作るハンドクリームが売れれば売れるほど、彼女たちの収入が安定する。女性の社会進出に貢献できるのも、このプロジェクトの魅力のひとつ」と語る。

ハンドクリームの収益の一部は、サポネ地区のトイレを増やすために使う予定だ。また、浄水装置を井戸に設置することで、水がきれいになり、下痢で命を落とす子どもの数を減らすことができる。

ブルキナファソの農村部では、トイレで用を足す習慣がない。屋外で排せつすることで、細菌が土壌に染み込み、浅井戸の水は汚染されてしまう。汚染された水を飲む子どもたちは下痢になり、ひどい場合は死ぬこともある。国連児童基金(UNICEF)の2015年のデータによると、ブルキナファソの5歳未満児死亡率は8.9%。日本の約30倍だ。ブルキナファソの5歳未満児にとって「下痢」はマラリアに次ぐ2番目の死因となっている。

水質を改善しようとフューチャーコードは2017年に、サポネ地区にトイレを10基作った。トイレを正しく使うよう啓蒙活動も同時に始めたが、これだけでは問題を完全に解決できないのが現実。そこで同団体は、シアバターのハンドクリームを商品化し、今秋から日本で売り出すプロジェクトを立ち上げた。

■主役は神戸市外大生ら

ブルキナファソから輸入するシアバターを使って、日本でハンドクリームを作るプロジェクトの主役となるのは、フューチャーコードの学生支部「BYCS(バイクス)」だ。バイクスは2016年10月、神戸市外国語大学の学生を中心に立ち上がった。

バイクスのメンバーが、ハンドクリームを生産する化粧品会社を選んだり、パッケージのデザインを決めたりする。水沼さんは「国際協力は大人でなくても、医療従事者でなくても、誰でもできるということを彼らに体感してもらいたい。このプロジェクトが成功したら、きっと彼らも自信をもてるはず」と期待を込める。

バイクスは現在、ハンドクリームを2018年秋ごろに発売する方向で日本コルマー(本社:大阪)と、デザインや販路について話し合っているところだ。値段は30ミリリットル入りで1000円(税込み)とする予定。百貨店やホテル、エステ店などで置いてもらえるよう、これからアプローチをかけていくという。

シアバター入りのハンドクリームといえば、フランスの化粧品メーカー、ロクシタンの商品が日本でも有名だ。ロクシタンは30ミリリットルのハンドクリーム(シアバター20%配合)を1512円(税込み)で売る。かおりや質感などが異なるたくさんのラインアップをそろえ、またパッケージもかわいいため、女性からの人気は高い。

商品の差別化についてバイクスの代表を務める小野智博さん(神戸市外国語大学1年生)は「フューチャーコードが使うシアバターは、ヨーロッパの有機栽培農産物の認証(ECOCERT)を得ている。だからハンドクリームの品質は高くなる。しかも安いのが特徴。高額で手が届かなかったけれど1000円なら買ってみようかなと思う層をターゲットにしたい」と語る。

「シアバターでブルキナファソの子どもたちの命を救う」というプロジェクトの趣旨が消費者に届く工夫もしていく。パッケージに貼り付けたQRコードを読み込めば、ハンドクリームの収益で何を買い、いつ設置するのかなどのプロジェクトの進ちょくを簡単に知ることができる。小野さんは「ハンドクリームを買うことがブルキナファソの子どもの命を救うことにつながる、ということを消費者に実感してもらいたい」と熱く語る。