埼玉・草加のガーナレストラン「アフリカン・パレス」、在日アフリカ人の憩いの場!

0918矢達さん、店の入り口[1]店の入り口の看板

本場のガーナ料理を堪能できるレストランが埼玉県草加市にある。その名も「アフリカン・パレス」(アフリカの宮殿)だ。ガーナ人女性のティナ・アプラクさん(31歳)が2014年1月にオープンした。ガーナ人をはじめ、ナイジェリア人、カメルーン人などが集まり、ガーナの音楽が流れ、ガーナの現地語(チュイ語)が飛び交うさまは「チョップバー」(庶民的なレストラン)のよう。ちなみに日本人の客は数えるほどだ。

■オクラのスープも

メニューを見ると、代表的なガーナ料理が勢揃い。そのいくつかを下に紹介する。

・フフ=キャッサバまたはヤムイモとプランテン(調理用バナナ)を餅のようについた料理。見た目も食感も餅に似ている。ほんのりイモの味がするが、クセがなく食べやすい。

・ライトスープ=トマト、タマネギ、トウガラシなどの野菜類と、肉や魚を煮込んだスープ。あっさりした味付けで食べやすい。このスープにフフをつけて食べる。

・バンクー=キャッサバとトウモロコシの粉を練って作ったもの。食感は柔らかく、酸味がある。

・オクラのスープ=トマトやタマネギ、トウガラシなどの野菜類と、肉や魚を煮込んだスープ。大量のオクラと、真っ赤なパームオイルを使うので、ドロッとしている。バンクーとの相性が最高。

・ケンケ=キャッサバとトウモロコシの粉を練り、トウモロコシの葉で包んで蒸した料理。酸味が強い。

・ティラピア=中東・アフリカ原産で、いまは世界中で食べられる淡水魚。揚げても焼いてもおいしい。焼いたティラピアとバンクーに、すり潰したトウガラシ、トマト、タマネギのソースをかけて食べると絶品。

・レッドレッド=プランテンを揚げて豆のシチューに添えたもの。プランテンと豆が真っ赤なパームオイルの色に染まっているのが名前の由来。

・ワチェ=赤飯のような豆ご飯。シトーと呼ばれるスパイスや、スパゲティ、キャッサバを乾燥させて粉上にした「ガリ」などをトッピングして食べる。

ガーナ人客で賑わう店内。中央がティナさん

ガーナ人客で賑わう店内。中央がティナさん

料理はすべて一皿1000円(税込み)。嬉しいのは量がガーナスタンダードなこと。小食の日本人だと1人では食べきれないかもしれないが、残った分はテイクアウトできる。

飲み物も種類は豊富だ。ガーナでポピュラーなソフトドリンク「モルト」(麦から醸造された甘 い飲み物。色は黒い)や「アルバロ」(麦などの穀物から醸造された飲み物。リンゴ味で色は透明)はもちろん、ガーナのビール(スター、クラブ、ストーンな ど)や地酒のピトー(ミレットやソルガムなどの穀物を発酵させたお酒)、パームワイン(ヤシのお酒)まである。ドリンクはすべて500円(税込み)。

■ガーナのスパイスも販売

この店は、ガーナの食材や美容品なども売る。ガーナ産のスパイス(シトー、乾燥させたトウガラシの粉など)、ヤムイモ、プランテン、ボディークリーム(ココ アバターなど)、付け毛(編み込みヘアなどに使う)、薬(「マイティ・パワー」という商品。伝統的な薬草からできていて、腰痛や精力の衰えに効く)など、 ガーナ人が日常で使うものを現地から輸入して販売。アフリカ人の客が買って帰るという。

このためティナさんは数カ月に一度、成田国際空港の貨物倉庫までガーナから届いた大量の荷物をレンタカーで取りに行くという。「今年は最低で500キロ、最高で1500キロくらいの荷物を受け取ったわ。毎回検査でひとつひとつ荷物を開けられて、時間がかかって大変よ」と語る。空路だけでなく、年2回は船便でドリンク類やパームオイルなどを送る。ガーナで品物の調達と輸出を手伝うのは、首都アクラに住む2人の姉だ。

ティナさんは日本に約10年暮らしている。ここ2年 はガーナへは帰っていない。おばと姉妹も日本に住む。このレストランをオープンする前は、千葉県の洗濯業者で働いたり、同じく千葉県でアフリカ人向けの洋 服を仕立てるビジネスを営んだりしていた。「いろんな仕事をしたけど、料理が大好きだから、ずっとレストランをオープンしたいと思っていた。10年目でやっと夢が叶った」と喜ぶ。

ガーナ人向けの日用品も販売する

ガーナ人向けの日用品も販売する

■来日のきっかけは「おしん」

日本へ来たきっかけを聞くと、「10歳のころに『おしん』を見たから。ずっと日本に興味があったの。どんな場所か見てみたかった」と照れくさそうに話す。両親はティナさんが幼いころ仕事のため日本へ渡ったが、ティナさんはガーナで生まれ育った。両親の帰国後間もなく、20歳前後だったティナさんは、憧れの日本へ旅立ったという。

ティナさんは日本で出会ったガーナ人男性と結婚し、娘が2人いる。そのひとりプリンセスちゃんは子役として映画「カラアゲUSA」(主演:高橋愛、9月20日 から全国順次公開)に出演している。ティナさんは「ガーナに帰りたいと思うけど、娘が日本で女優を目指しているし、当分は帰れないわね」と少し寂しそう。 「日本で暮らしていてちょっと困るのは、ガーナにいる親せきや友人がしょっちゅう『送金してくれ』『日本に来たいから手伝ってくれ』と頼んでくること。私 だって大変なのに‥‥。だけど頼られると放っておけないし」

アフリカン・パレスが一番賑わうのは日曜日。多いときでは50人ぐらいの客が入る。もうすぐ食欲の秋、アフリカの文化をおいしく学ぶのも悪くない。