空薬莢からフォークを作る! カンボジアの地雷撤去員のために立ち上がった古白川真さん

地雷原を訪問する古白川真さん(右)。左は、地雷撤去団体「CSHD(カンボジア・セルフヘルプ・ディマイニング)」の創設者であるアキ・ラーさん地雷原を訪問する古白川真さん(右)。左は、地雷撤去団体「CSHD(カンボジア・セルフヘルプ・ディマイニング)」の創設者であるアキ・ラーさん

カンボジアのシェムリアップで、地雷を撤去する人(ディマイナー)のために立ち上がった日本人がいる。革製品などを扱う土産物屋「shippos」をシェムリアップで経営する古白川真さん(33)だ。空の薬莢(やっきょう)からフォークやスプーンを作り、ひとつ売れるごとに、ディマイナーに1回分の食事代を渡す。「ディマイナーたちと知りあったことで、命がけで活動する彼らのことを人ごとだと思えなくなったから」と、古白川さんは支援に乗り出した理由を語る。

プロジェクトの名前は「FORKS FOR FOLKS」(人々のためのフォーク)。始めたきっかけは、カンボジアの地雷撤去団体「CSHD(カンボジア・セルフヘルプ・ディマイニング)」のディマイナーたちとの出会いだった。

古白川さんはカンボジアへ移り住む前、日本で音楽活動をしていた。CSHDを立ち上げた有名なカンボジア人活動家であるアキ・ラー氏の息子に音楽を教えていたことから、アキ・ラー氏やディマイナーらと親しくなった。地雷撤去の現場に何度も足を運ぶうちに、危険を覚悟のうえで活動するディマイナーらに心を動かされた。「地雷撤去を自分もやりたい」と思うようになった。

だが地雷の撤去作業は、認可を得た一部の人しかできない。「自分はかかわることすら許されないのか」と劣等感を覚えたが、それでもディマイナーのために何かをしたいとの思いは強かったという古白川さん。撤去作業そのものはできなくても、自分の創造力を駆使して、地雷撤去の活動に貢献できることはないかと考えた。

「地雷原に同行したとき、CSHDの活動資金として現金を渡すよりも、現場に食べ物や飲み物を持っていったほうがディマイナーらは喜んでくれたことを思い出した」(古白川さん)。思案の末、「銃器を什器に、武器を食器に」を合言葉に、空薬莢からフォークやスプーンを作り、その収益をディマイナーらの食費に充てるFORKS FOR FOLKSを立ち上げた。実は最初、撤去された地雷を材料にフォークを作ることを考えた。だが法的にも、技術的にもクリアすることが難しかった。そのためカンボジアで昔からポピュラーで、比較的加工が簡単な空薬莢に目をつけた。

FORKS FOR FOLKSは現在、空薬莢を原材料にフォークやスプーンを安定して生産できる段階に入った。古白川さんが経営する店shipposでテスト販売を始めたところだ。価格は小さなもので1本10ドル(約1070円)から。1本売れるごとに、ディマイナーは1食とれる金額を受け取る。

古白川さんはまた、「地雷被害者=悲惨」という世間の見方を変えたいと思っている。幼少期に地雷で片腕を失ったCSHDの隊員(ディマイナー)もいる。「彼らはそのことをタブーにせず、当事者同士で笑い話にする。ユーモアで乗り越えていく明るさやたくましさをもっている」(古白川さん)

shipposにぶらっと立ち寄った観光客が、武器から作ったフォークを手に取る。それを買えば、地雷撤去の最前線にいる人を応援できる。古白川さんは「活動を通して、地雷の問題をもっと身近に感じてほしい」と願う。FORKS FOR FOLKSの精神を古白川さんは「MINE IS YOURS」と呼ぶ。「私のものは、あなたのもの」というシェアの心と「MINE(地雷)の問題は、私たち自身の問題でもある」という2つ意味をかけあわせたものだ。

FORKS FOR FOLKSの今後について古白川さんは「最終的な狙いは少額の寄付ではない。CSHDはカンボジア政府などから大きな支援を得ていないうえに、カンボジアの政情不安もあって、現在受けている支援もあと数年でストップするとの話も聞く。FORKS FOR FOLKSをきっかけに地雷問題への関心が高まり、ディマイナーらへの支援が拡大すれば本望だ」と語る。

空の薬莢から作ったフォークとスプーン。黄金に輝く色合いが美しい

空の薬莢から作ったフォークとスプーン。黄金に輝く色合いが美しい