貧困の負の連鎖を断ち切るのは「教育」! ベナンの女子大生の挑戦

子どもの英語教育に力を入れるクラリスさん。「英語を教えてくれてありがとう」。という言葉にやりがいを感じている。ベナンの子どもの英語教育に力を入れる女子大生のクラリスさん。「英語を教えてくれてありがとう」という言葉にやりがいを感じる(ベナン・コトヌーで撮影)

西アフリカのベナンに、貧困からの脱却を目指す女子大生がいる。母子家庭で育ったソホウエノイ・クラリスさん(24)だ。“ベナンの東大”といわれるアボメ・カラビ大学に頑張って入学。同時に、コンピューターを販売する会社で働き始め、通学用のバイクも買った。貧しい子どもに無料で英語を教えるNPOも立ち上げた。「お金がなくても、人生の可能性を広げようと思ったら教育が重要」とクラリスさんは熱く語る。

クラリスさんが8歳のとき、父が病に倒れた。それ以降、生活が困窮したため、顧客に売っていた、母の農園で採れるトウモロコシや豆を母子8人で食べるように。収入はほぼなくなった。「小さい時は生きていくことが辛かった」とクラリスさんは涙を浮かべる。

貧困から抜け出すにはどうしたらいいのか。「そうだ、大学に入ろう」。クラリスさんはこう考えた。

「アボメ・カラビ大学に無料で学べる学部があることがわかった。お金のない私でも行けると思った」とクラリスさん。入学試験をパスするため、自分の家で1日8時間近く勉強を続けた。晴れて合格したクラリスさんはアボメ・カラビ大学で経済を専攻する。同時に、コンピューターの販売会社での仕事を得て、35万CFAフラン(約7万円)で通学用のバイクも買った。購入したのは中古のホンダドリームだ。

クラリスさんは大学2年生のときに(2015年)、3~13歳の子どもに無料で英語を教えるNPOをコトヌーで立ち上げた。団体名は「ペチ・ビリギ」。フランス語で「ちょっとバイリンガル」という意味だ。

活動の目玉は、ペチ・ビリギに所属する英語教師を小学校に派遣すること。学校側が負担する金額は、週2時間の場合1カ月1万5000CFAフラン(約3000円)、週4時間だと同3万CFAフラン(約6000円)と安い。

クラリスさんが英語教育にこだわるのは「英語を教えることで、子どもの選択肢を少しでも広げたい」と考えるからだ。2011年の世界銀行の統計によると、ベナンは1日1.25ドル以下で暮らす人の割合が36.2%にのぼる(現在の貧困線は1日1.9ドル以下)。貧困に悩まされるベナンで、一見苦労を感じさせない明るい女性のクラリスさん。ただこの国では笑顔の裏に隠された多くの苦難があるのかもしれない。