日本人の英語教師とベナン人の教育NGOスタッフ、ベナンの子どもの学費60万円の調達に挑む

2019年8月にソホヌーさんの友人が運営する教育NGOの活動視察に訪れた倉科さん(写真中央)。子どもたちが帰り際に「ありがとう」と日本語で繰り返し言いながらついてきた(アボメカラビ)2019年8月にソホヌーさんの友人が運営する教育NGOの活動視察に訪れた倉科さん(写真中央)。子どもたちが帰り際に「ありがとう」と日本語で繰り返し言いながらついてきた(アボメカラビ)

西アフリカのベナン在住で英語教師の倉科茉季さん(31)と教育NGOスタッフのクラリス・ソホヌーさん(26)が、ベナンの首都近郊で小学校に通えない子ども25人の1年分の学費をまかなうためにクラウドファンディングに挑戦している。開始2週間で当初の目標金額の43万円を達成。最終期限の11月25日までに、次の目標である60万円を集め、支援する子どもの数を15人から25人に増やすことを目指す。

■25人の子どもを学校へ

2人のクラウドファンディングは10月25日にスタートした。第一目標の43万円は開始からわずか2週間でクリア。倉科さんは「驚いた。私の友人や家族だけでなく、さらにその友人にまで支援をしてもらっている」と話す。

集まったお金は、ベナン最大の都市コトヌーの隣の街アボメカラビに住む子どもが小学校に1年通うための費用にあてる。倉科さんによると、1人当たり必要なのは7万セーファ(CFA)フラン(約1万4000円)。内訳は、文房具や教科書、かばんなどの道具に1万5000CFAフラン(約3000円)、制服に5000CFAフラン(約1000円)、朝食代に3万5000CFAフラン(約7000円)、入学金1万5000CFAフラン(約3000円)だ。

43万円を達成すると15人の子どもたち1年分の学費がまかなえる(目標額が118万円以下の場合は税抜き20万円が手数料として引かれる)。第一目標を達成した今、目指すのは60万円を集めること。合計で25人の子どもたちの支援が可能になる。

■子どもの笑顔の裏に貧困

倉科さんがベナンで暮らし始めたのは2019年7月末。クラウドファンディングを開始するたった3カ月前だ。10月からコトヌーにある起業家養成学校「Van Duyse Entrepreneurial Leadership Institute(VELI)」でビジネス英語を教える。

「途上国で英語を教えたいという学生時代からの夢をかなえるためにベナンに来た。子どもたちが学校に通うための支援をしようとは正直、まったく思っていなかった」と倉科さんは振り返る。心境が変化したきっかけは、ソホヌーさんとの何気ない会話だった。

公用語のフランス語が話せないベナン人が多いのはなぜか、倉科さんがソホヌーさんに質問したときのことだ。「学校に行っていないからよ」と当然のように言うソホヌーさんに倉科さんは驚きを隠せなかった。

自分の目で確かめたかった倉科さんは、学校に通えない子どもの家庭に話を聞きに行きたいとソホヌーさんに頼んだ。住んでいる地域にある8つの家庭を訪れ、ヒアリング調査した。

そこでわかった事実は倉科さんの想像をはるかに超えていた。「仕事がなく、自分の家の庭にある小さな畑で育てたトマトを売って暮らしていた。1日の稼ぎは多くても200~300CFAフラン(約40~60円)。平均で4、5人の子どもをもつベナンの家庭にとってはあまりに少ない」(倉科さん)

元気にあいさつしてくれる身近な子どもたちがこうした環境で生活していることに衝撃を受けた倉科さんは、何かできることはないかと考え始める。

倉科さんが抱いた「子どもたちが学校に通えるようになんとかしたい」という思いは、ソホヌーさんも一緒だった。以前からアボメカラビにある教育NGOのメンバーとして子どもたちに教材や制服の寄付、朝食代の支援をしていたソホヌーさん。2人が動き始めるのはすぐだった。

「今回のクラウドファンディングが終わりではない。子どもたちの親が自力で稼ぎ、教育費をねん出できるようにすることを目指したい。今後は母親たちがテーラーやヘアドレッサーのトレーニングを積むために必要な資金援助を考えている」(倉科さん)

2019年8月に倉科さんとソホヌーさんが暮らすアボメカラビで家庭訪問を実施。学校に通えない子どもをもつ家庭8つのうち7つはシングルマザーの家庭だった。写真右がソホヌーさん

2019年8月に倉科さんとソホヌーさんが暮らすアボメカラビで家庭訪問を実施。学校に通えない子どもをもつ家庭8つのうち7つはシングルマザーの家庭だった。写真右がソホヌーさん