ネクタイが眼鏡ケースに?! バンコクのスラムでおもしろいアップサイクルをするNGOがあった

ユニークな発想が目を引く、ネクタイからできた眼鏡ケースユニークな発想が目を引く、ネクタイからできた眼鏡ケース

タイ・バンコクのクロントイ・スラムに、古着を「アップサイクル」するNGOがある。セカンド・チャンス・バンコクだ。アップサイクルとは、元の商品よりも価値が上がるようにリサイクルすること。同NGOにデザイナーとして勤務するパラポワン・クンケオさん(25歳)は「そのままでは売れないものもアイデア次第では売れるようになる」と語る。

セカンド・チャンス・バンコクの活動の柱は、リユースショップとアップサイクルショップの運営だ。1階のリユースショップには、寄付された古着や電化製品が格安で並ぶ。2階には、古着をアップサイクルさせたユニークな商品が売られる。不要となったネクタイから作った眼鏡ケースをはじめ、マスコット、キーホルダー、バッグ、ガーラント(壁に掛ける飾り)、ヨガマットケース、シュシュ(髪どめ)などだ。

一番人気は、タイを象徴する、手のひらサイズの象のマスコット。値段は180バーツ(約640円)だ。もとの服のカラフルな柄を生かしたデザインで、一点もの。年間で300~400個売れるという。

ネクタイからできた眼鏡ケースはパラポワンさんが考案したもの。クロントイ・スラムで生まれ育った彼女は15歳のときからパートタイマーとして、2年前からはスタッフとして働く。

寄付されたネクタイは、当初はそのままで売っていた。ところがタイはネクタイをする習慣がない。このためあまり売れなかった。「どうすればネクタイを売れる商品にできるかを考えた。眼鏡ケースならサイズもぴったりだった」(パラポワンさん)。ユニークな発想が受け、売れ行きは好調だ。

パラポワンさんによると、難しいのは品質をどう管理するか。アップサイクルの商品はすべて手作りだ。これは裏を返せば、商品を自由自在に作れる半面、質のばらつきが起きやすいという弊害もある。「商品の価値をより高めるために、質の改善にも力を入れている」とパラポワンさんは語る。

同じ商品でもサイズや形が微妙に違い、注文した顧客からクレームがくることもかつては多かった。そこでパラポワンさんはすべての商品に規格を設けた。バッグであれば布の大きさを均一にするなどだ。浸透するまで1年かかったが、そのおかげでクレームは激減。商品の売り上げはアップした。

セカンド・チャンス・バンコクが設立されたのは2009年。オーストラリアのキリスト教系財団Urban Neighbours of Hope(UNOH)のスタッフであるジョディ・マッカートニーさんと、その妻クリス・マッカートニーさんが、クロントイ・スラムの住民の生活の質を向上させるために立ち上げた。継続的な寄付と、クロントイ・スラム出身のスタッフが中心となって運営するおかげで、ジョディさんが帰国したいまも活動は続く。

意外なことに、アップサイクル事業が始まったきっかけは「古着の寄付が多すぎたこと」だった。オフィスには毎日20~30キログラムの古着がタイ国内はもとより、オーストラリアやカナダなどから届く。売り切ることができなかった古着を、優れた裁縫技術もつクロントイ・スラム出身の女性たちが別の商品に変身させた。

設立者のジョディさんが宣伝しているため、アップサイクル製品を購入する一番の顧客はオーストラリア人だ。タイ国内ではスタッフが直接、ホテルや学校へ行き、観光客らなどに商品を売っている。

バンコク・クロントイ地区にあるセカンド・チャンス・バンコクの店舗。2019年でオープン10周年

バンコク・クロントイ地区にあるセカンド・チャンス・バンコクの店舗。2019年でオープン10周年

一番人気の商品である「象のマスコット」

一番人気の商品である「象のマスコット」