チャリティーTシャツから社会を変える! ソーシャルアパレル会社ジャミン がNPOを毎週応援

ジャミン共同代表の西田太一さん(京都にあるジャミンのオフィスで撮影)ジャミン共同代表の西田太一さん(京都にあるジャミンのオフィスで撮影)

社会問題の解決に取り組む非営利団体(NPO)を1週間に1つ取り上げ、オリジナルTシャツを作って売り、収益の一部をNPOに寄付するアパレル会社がある。京都府京田辺市にあるジャミンだ。創設者の西田太一代表(36)は「チャリティーTシャツを通して、社会問題に立ち向かうNPOの活動を伝えたい」と語る。

■1週間で150万円を寄付

「チャリティー(寄付)をもっと身近に」をモットーに掲げるジャミンのビジネスモデルはユニークだ。

ジャミンはまず、取り上げるNPOを訪問し、取材をする。その後、活動やミッションをイメージしたデザインのTシャツを制作し、1週間限定で販売する。価格は1着3400円から。1着売れるごとに700円をNPOに寄付する。

生産は完全受注制だ。このため売れ残ることはない。販売もオンラインが中心であるため、店をもたなくて済む。売り上げの20%を寄付に回しても収益を上げることができるのが強みだ。

2014年に誕生したジャミンは当初、寄付金が1万円にも満たない週があったという。ところが今では毎週20万円前後をNPOに寄付している。鳥の保護施設を運営するNPO「TSUBASA」を取り上げた週は150万円の寄付金を集めた。

■メッセージで勝つ!

「(販売数では)ユニクロに勝てない。だがメッセージ性ではユニクロに勝つ」。西田さんはこう豪語する。メッセージ性とは、チャリティーTシャツを通して社会問題とNPOの活動を伝えることだ。

ジャミンはアパレル会社には珍しくライターを雇っている。専属ライターの山本めぐみさんは毎週NPOを訪れ、NPOが取り組む社会問題、ミッション、寄付金の使い道を細かく聞き取る。それを5000〜6000字のコンテンツにまとめ、チャリティーTシャツの販売と同時に、ジャミンのウェブページ「CHARITY」にアップする。

「NPOで働く人の心に深く入っていきたい」と山本さんが言う通り、ウェブページの内容はNPOの成果以上に、かかわる人々の熱い思いが中心だ。

がんで親を失うという悲しみとの向き合い方を、子どもたちに伝える活動をするNPO「Hope Tree」を取材した時のことだ。代表の大沢さんは、自身もがんからの生存者であり、夫を自殺で亡くしていた。山本さんは涙を流しながらその詳細を聞き取り、大沢さんがなぜがんになった親をもつ子どもをサポートするのかを文章にまとめた。

■ホームレスのダンスチームも

世界的医療団体「国境なき医師団」から、ホームレスのダンスチーム「ソケリッサ」といったあまり有名ではないものまでジャミンが取り上げるNPOはさまざまだ。Tシャツの購入者や読者に幅広い社会問題を考えてもらうきっかけを作るためだ。

西田さんは言う。「ホームレスや引きこもりといった問題を扱う場合、寄付は集まりにくい。これは、『自分が働かないだけじゃないの?』といった思いが人々の頭の中にあるから。だけどホームレスや引きこもりになるのは個人の問題だけではない。その経緯をくみ取り、デザインとメッセージで伝えることを大切にしている」

そんなジャミンを信頼して、ウェブサイトを見るリピーターは多い。西田さんは「ページビューの数字はあまり気にしない」というが、ジャミンの記事を載せるYahooジャパンには多くのコメントが寄せられる。ジャミンの活動に共感し、イベント用にジャミンのTシャツを別途発注する会社もあるという。

■きっかけはスリランカ

西田さんは大学時代、NPOや社会問題にはまったく興味がなかったという。きっかけとなったのは卒業研究で訪れたスリランカ。研究のテーマだったスリランカの水問題を調査するために村々を訪問した際、現地の人たちの生き生きとした姿を目にして、「お金や便利さではない価値を感じた」(西田さん)。また泥水を飲む子どもたちの姿を見て、小さくても自分にできることはあるはずだと思った。

途上国のために働きたいと考え、大学院を卒業した後は開発コンサルタントとなった西田さん。ミャンマー、タイ、日本の3カ国で開発するミャンマーのダウェイ経済特区の開発など1兆円を超えるプロジェクトに携わり、充実した日々を送っていた。しかし開発の成果が現れるのは20〜30年先。目の前で苦しむ現地の人たちを今すぐサポートしたい。そこでたどり着いた答えが、現場で活動するNPOをチャリティーTシャツで支えるというアパレルビジネスだった。

「チャリティーとは、税金とは別に、頑張っている団体を金銭でサポートするという個人の意思表示のひとつ。頑張っているNPOが正当に評価されるように、チャリティーTシャツを通して、多くのNPOを伝えていきたい」。西田さんはチャリティーへの熱い思いをこう表現した。

ジャミンのオフィス。1階にはビリヤード台やバーカウンターが設置してある。毎週金曜日の夜はバーとして地域に開放する

ジャミンのオフィス。1階にはビリヤード台やバーカウンターが設置してある。毎週金曜日の夜はバーとして地域に開放する

Tシャツはジャミンのオフィスで一枚一枚プリントされる

Tシャツはジャミンのオフィスで一枚一枚プリントされる

スリランカの村で水質調査をする西田さん(2005年)

スリランカの村で水質調査をする西田さん(2005年)