今時の難民はアンケートサイトで稼ぐ! 定職に就けないベネズエラ難民を救う収入源

さわやかな笑顔のルイス・アルバラードさん。コロンビア・メデジンのベレン図書館で撮影さわやかな笑顔のルイス・アルバラードさん。石油精製基地として発展した街カビマスの出身だ(コロンビア・メデジンのベレン図書館で撮影)

コロンビアに、1日5時間のアンケートサイトの仕事で1カ月35万ペソ(約1万1200円)を稼ぐベネズエラ難民がいる。ベネズエラ西部のスリア州カビマス出身のルイス・アルバラードさん(23)だ。この仕事はベネズエラにいた2017年に、友だちの勧めで始めた。ハイパーインフレに見舞われたベネズエラからコロンビアに3カ月前に逃れてきたものの、定職はない。就活でこれまで20通以上の履歴書を送ったがどれも反応がないという。

アルバラードさんが使うアンケートサイトの名前は、フランス企業が運営する「Toluna(トルーナ)」だ。ここには、さまざまな企業が、知りたいことをアンケートとして登録する。回答すると、ポイントがもらえ、インターネット通販サイトのアマゾンで買い物できるギフトカードに交換できる。このギフトカードをコロンビア人に売り、コロンビアの通貨ペソを手に入れるという。

アルバラードさんは毎日、1日5時間、複数のアンケートに答える。手にする収入は1カ月約35万ペソ(1万1200円)。この金額は、コロンビアでの最低賃金87万7802ペソ(約2万8690円)のおよそ4割だ。

「こないだはアンケートに答えて1200ポイント(45円相当)をもらった」と難民生活を送るアルバラードさんは言う。

アンケートサイトでのポイント集めは、インターネットが使える環境があれば、どこにいてもできる。アルバラードさんがトルーナを利用し始めたのは、ベネズエラにまだいる2017年。今はコロンビアの自宅でスマホを使って“仕事”している。「きのうは自宅で5時間やったよ」

アルバラードさんによると、生活費を稼ぐために、クラウドソーシングで仕事を請け負うベネズエラ人は多いという。トルーナのほかにも、画像の加工をスマホで請け負うSpare5やRemotaskも、コロンビアにいるベネズエラ難民が使うサイトだ。

コロンビアで暮らすベネズエラ難民がクラウドソーシングを介した仕事を好む背景には「労働許可の問題」がある。ベネズエラ難民がコロンビアで仕事するには、コロンビア政府が発行するPEP(特別労働許可)が必要だ。だがコロンビアに来たばかりのベネズエラ難民の多くはPEPを持っていない。PEPが必要ないインターネットの仕事は渡りに船だ。

アルバラードさんがコロンビアに来たきっかけのひとつは、ベネズエラで通っていた大学へ通えなくなったためだ。ハイパーインフレを受けて学費も高騰。2017年1~6月の3000万ボリバル(約6万8500円)から7~12月は1億4000万ボリバル(約32万円)とおよそ5倍となった。「教授も去り、必要な授業も受けられなくなった」。アルバラードさんは、2018年に大学を休学した。

アルバラードさんがコロンビアにたどり着いたのは2019年11月15日。ベネズエラ人の恋人、恋人の弟の3人で、トラックで27時間かけて国境を越えてきた。現在は、家賃(電気代とガス代込み)64万ペソ(約2万800円)のアパートに3人で暮らす。

アルバラードさんは現在就活中だ。「1月は20通ぐらい履歴書を送った。だけどまだどこからも返答がない」。アンケートサイト以外に仕事が見つからないため、大学へ戻るお金も貯金できない。「将来は憧れのシステムエンジニアになりたい。大学に行く夢は諦めていない」とアルバラードさんは力強く話す。