日本のNGO「AfriMedico」がタンザニアで置き薬、利用者が180世帯に増えた秘訣は「現地スタッフの活躍」

薬箱を持つ現地メンバーとAfriMedicoの町井恵理代表理事薬箱を持つ現地メンバーとAfriMedicoの町井恵理代表理事(右端)

認定NPO法人AfriMedico(本部:東京・港)がタンザニア北東部の村で「置き薬事業」を始めて4年半、利用者はおよそ180世帯に広がってきた。置き薬がタンザニアで普及したのは、地元の2人の現地メンバーの活躍が大きかったからだという。2人は、薬を都市から農村へ運んだり、村で家を回って薬を補充したりする。

置き薬とは、家庭などに薬を置いておき、使った分だけの代金を払う、富山発祥の仕組みだ。

この置き薬のスキームをAfriMedicoは、タンザニア北東部のブワマ村とムレゲレ村で展開中だ。解熱剤や鎮痛剤、下痢止めなどを配る。値段は、タンザニア都市部とほぼ同じ。2つの村の利用世帯数は、初めて村に薬を置いた2016年の50から現在は180へと3.6倍に増えた。

「タンザニアの農村にも薬局はある。だけど仕事が忙しく、営業時間に行けない農民もいる。家に薬がある安心感は大きい」と竹村のり子理事は語る。

■紙芝居で薬の飲み方伝える

置き薬事業をここまで普及させた立役者は、医師や看護師、助産師、医療を学ぶ大学生などのタンザニア人学生などのメンバーだ。任務は、都市から農村へ薬を運び、その薬を各家庭に補充し、薬の飲み方を説明すること。

竹村理事は「こうした人材はエリート中のエリート。タンザニア国内にさほど多くないので、採用できる人材を探すことに苦労した」と話す。

現地メンバーの中でも、AfriMedicoの活動に特に貢献しているのが、ソフィアさんとゴスビーさんの2人だ。

ソフィアさんは、ムレゲレ村で置き薬マネージャーを務める。主な仕事は、各家庭を回り、薬の代金を集め、薬を補充すること。紙芝居やリーフレットなど村人にもわかりやすいツールを使い、薬の正しい飲み方も教える。「ソフィアは話し上手。薬の飲み方を説明する活動は、村の母親たちからも好評」と竹村理事は語る。

利用世帯数が増えた2018年当時、学生メンバーだったゴスビーさんの主な仕事は都市で調達した薬をブワマ村とムレゲレ村へと運ぶことだった。当時の利用世帯数の約7割に彼が薬を届けた。

事業が始まって3年目の2017年、置き薬を利用する家庭の数が伸び悩んでいた。竹村理事は「置き薬マネージャーの活動量が上がらなかったことが原因。人材マネジメントにとても苦戦した」と語る。それでも、ゴスビーさんのおかげで事業はなんとか維持でき、ソフィアさんが加わったことで事業はさらに拡大していったという。

■コロナの影響ほぼなし

世界的に流行する新型コロナウイルスはタンザニアも襲った。だが「AfriMedicoの活動について、それほど影響は受けていない」と竹村さんは言う。その理由は2つある。

ひとつは、新型コロナがタンザニアに入ってくる前に、AfriMedicoは行動を起こしていたこと。新型コロナは日本で先に感染拡大したため、タンザニアで流行するまでにタイムラグがあった。タンザニア人の学生メンバーは、都市と農村の行き来ができなくなることを見越し、前もって都市から農村へ薬を多く持っていったことが奏功した。

もうひとつは、そもそもタンザニア国内で新型コロナがあまり流行しなかったことから行動制限がかからなかったこと。タンザニアのジョン・マグフリ大統領は5月、新型コロナに対して勝利宣言をした。タンザニア政府は5月8日以降、新型コロナ感染者数を発表していない。政府が発表した最終の感染者数は5月8日時点で509人(ワールドメーターでも11月9日時点で509人のまま)。