悩める名古屋の元OL「私の人生はコロンビア山奥のコーヒー農園にあった!」

0213赤間さん、コーヒーPフレドニアの大自然を背景に愛犬とともに笑顔を見せる松尾彩香さん(コロンビア・アンティオキア州)

名古屋でOLをしていた日本人女性が人生のやりがいを見つけた場所は、コロンビア・メデジン郊外にある山奥のコーヒー農園だった。日本では会社の事務、メイクの講師、エステティシャンと仕事を転々とするが、満足できなかった。今は大好きなコロンビアの大自然の中で、コロンビア人の夫とともにコーヒー農園を営む。コーヒーからの稼ぎは日本円にして年間2万円ほどと生活は厳しい。打開策として、日本向けにコーヒー豆の直接販売やSNSでの発信を精力的に行う。

自分探しの9年間

コーヒーの産地で有名なコロンビアのアンティオキア州フレドニアの山奥に住む日本人女性がいる。愛知県豊田市出身の松尾彩香さん(31)だ。

彩香さんは、名古屋で短大を卒業後、自分にあった仕事を求めて転々とした。2009年から4年間、トヨタ系の会社で事務職をした。だが都会での仕事に憧れ、メイク学校に入学。卒業後にメイクの講師を2年間やった。しかし海外生活への憧れから退職。理由は「海外でメイクの仕事を得るのは難しいと思ったから」。

2015年9月、スペインへ巡礼の旅に出た。そこでスペイン語に興味をもった。いったん日本に帰国し、美容の仕事の幅を広げようとエステの仕事に就いたが、ストレスに耐えられずに半年で退職。その後、派遣で農業メーカーの営業事務を2年。スペインへ行くお金を貯めた後に辞めた。

当初はスペインに留学するつもりだった。だが生活費が高い。安くてスペイン語が話せる国ということでコロンビアを選んだ。日本に偶然いたコロンビア人の知り合いに聞いてみたところ、コロンビアに住むおばさんをホームステイ先として紹介された。

熱烈なラブコール

2018年6月から3カ月だけの予定で、コロンビア第2の都市メデジンでホームステイを始めた。ところがラテン的な家族の雰囲気についていけず、精神的な疲れがたまっていく。

2018年8月、ホームステイ先のおばさんに「長男が山(フレドニア)に住んでいるから、気分転換に行こう」と誘われた。滞在日数はたったの2日。だが畑の手伝いや自然に居心地の良さを感じた。

そこで出会った長男のアルレックス・ラミレスさん(38)から熱烈なラブコールを受け、結婚。「人生何があるかわからない」とはにかんだような笑顔を見せる。

フレドニアにやって来た当初は、コーヒーはお金にならないのでコーヒー農園をやめようと思っていたという。農協へ卸すコーヒー豆の価格は1キログラム200円程度。これは、コーヒー豆の皮をむき、乾燥させた後の重さだ。儲かるビジネスではない。

だがフレドニアの生活が続くうちに、彩香さんは、フレドニアのコーヒー農園があまりに日本で知られていないことに“もどかしさ”を感じる。発信したいと思うにようになった。

コロンビアのコーヒーを代表するイメージキャラクターといえば、ソンブレロをかぶり、白いポンチョを羽織ったコーヒー農家の「ファン・バルデス」が有名だ。南米で知らない人はいない。彩香さんは「ファン・バルデスの2代目モデルのカルロス・サンチェスはフレドニア出身! 日本に帰った時に、日本一の焙煎師の人にこれを話したら、フレドニアのことすら知らなかった」と驚く。

日本で知られていないのはフレドニアだけではない。農園の労働者がどんな人たちで、どんな状況で働いているのかも伝わっていない。農園主が注目されがちだが、農園で実際に作業をするのは期間(または日雇い)労働者やそのリーダー役のマヨルドモだ。

労働者の多くは子どものころ学校に通っていない。読み書きもできない。割の良い仕事に就くのは大変だ。コーヒー農園での日当は、朝6時から昼の2時まで、急斜面でコーヒーの収穫をしてわずか3万ペソ(960円)。これは想像以上に重労働だ。

「私はコーヒーについて知っているつもりだった。日本ではスターバックスでバイトしていたし。でも来てみたら全然違った」(彩香さん)

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