アフリカ産の干し芋が日本初上陸へ! タンザニアで起業した協力隊OB、7年越しの夢実る

栽培マニュアルをスマホで農民に見せ、植栽間隔について説明するマトボルワの社員。2019年に撮影したもの(写真提供:長谷川竜生氏)栽培マニュアルをスマホで農民に見せ、植栽間隔について説明するマトボルワの社員。2019年に撮影したもの(写真提供:長谷川竜生氏)

東アフリカのタンザニアに、干し芋やドライフルーツを生産・販売する会社がある。青年海外協力隊OBの長谷川竜生さんが2014年に立ち上げたマトボルワ(本社:タンザニア・ドドマ)だ。契約農家が栽培する日本のサツマイモ(タマユタカ)を、ドドマにある自社工場で加工。自然栽培のサツマイモを原料とする無添加で甘い干し芋の日本向け輸出を目指す。

栽培マニュアルはスワヒリ語で

マトボルワが手がけるのは、ドドマ近郊の農家へのサツマイモの栽培指導、サツマイモの買い取り、干し芋への加工、販売だ。「とりわけこだわるのは、収穫するサツマイモの品質。干し芋はシンプルな加工品なので、製品の品質は9割方原料で決まる」と長谷川氏は言う。

マトボルワが栽培指導するのは10軒の契約農家だ。

長谷川氏らはまず、マトボルワが無料で渡すタマユタカの苗の植え方、サツマイモ畑の畝の大きさ、植栽間隔などをスワヒリ語で書いた「栽培マニュアル」を作成。サツマイモの栽培時期である1〜7月に、マトボルワの従業員が農家の畑を訪ね、このマニュアルを配る。

「試験栽培を通して得た病気や害虫防除などの知識をマニュアルに落とし込み、アップデートしてきた。タマユタカの品質が上がれば、マトボルワは、より高い価格で買い取る」と長谷川氏は話す。

同社は2020年、約18トンのタマユタカを買い取った。金額に換算すると約900万タンザニアシリング(40万円)だ。

タマユタカの買い取りでマトボルワがこだわるのは、その場で金額を査定し、その場で現金で払うことだ。

マトボルワの従業員は収穫時期の6〜7月、トラックで畑に乗り付け、収穫済みのタマユタカを計量する。サイズ別に5つの等級に分け、加工しやすいサイズには買取価格に15%程度のインセンティブをつける。

タンザニアでのサツマイモ取引は一般的に、農家が袋に詰めた状態のサツマイモを買付業者が中身を確認しないで買い取る。長谷川氏は「農家は重量をごまかそうと袋の中に石や土を入れてくることがある。対して買付業者も、燃料費が上がった、相場が変わったなどと理由をつけて買取価格を抑えようとする」と取引の実態を話す。

もし農家が取引先と信頼を築き、その要望に応えることで相手に必要とされる存在になれば、騙しあいで博打的に儲けなくてもよくなると長谷川氏。「農家と食品会社が協働して、二人三脚で干し芋の品質を上げていく。農家が品質のよいサツマイモを作ってくれたら干し芋の販路が広がるから、利益を農家へのインセンティブとして還元する。そういう良い循環のある事業にしたい」

農家からも「ごまかされてない。信用できる」「現金払いは助かる」といった声が寄せられているという。

「収穫期に他の業者が、マトボルワと契約する農家にサツマイモを横取りしに来ることがある。そんなときも『これはマトボルワに売る芋だから売らない』と農家は断ってくれるようになった」(長谷川氏)

タンザニア・ドドマ近郊の契約農家の畑で、栽培に当たっての課題をヒアリングする長谷川社長と社員。2017年に撮影したもの(写真提供:長谷川竜生氏)

タンザニア・ドドマ近郊の契約農家の畑で、栽培に当たっての課題をヒアリングする長谷川社長と社員。2017年に撮影したもの(写真提供:長谷川竜生氏)

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