債務不履行のザンビア、庶民の料理に欠かせない「トマト」の値段が2.5倍になった

ザンビアの市場ザンビア西部州モングの市場で売られる野菜。とりわけトマトはザンビア人にとって毎日の食卓に欠かせない

2020年11月13日にデフォルト(債務不履行)に陥った南部アフリカのザンビアで、急激に上がった物価が市民の生活を圧迫している。西部州モングで農業を営むステラ・ムワンバジさんは「小さなトマト4つの値段は、2020年9月は2クワチャ(約10円)だったのに、2カ月後の11月は5クワチャ(約25円)と2.5倍になった」と溜息をつく。

「生活は厳しくなるばかり」

トマトは、ザンビアの料理にふんだんに使う食材だ。

ムワンバジさんにとっていつもの夕食のメイン料理は、ザンベジ川でとれた魚(ブリーム)の揚げ焼き。そこに、粗みじん切りにしたトマトとタマネギを油で炒め煮したトマトソースを添える。付け合わせは、カボチャの葉っぱをトマトとタマネギと一緒に炒めたおかず。トウモロコシの粉を少量の熱湯で練りながら炊いた主食シマとともに食べる。

値上がりしたのはトマトだけではない。「庶民の多くが夕食に魚を食べられなくなった」とムワンバジさんは話す。ムワンバジさんが家族4人のために買うブリーム5匹の値段は50クワチャ(約250円)から100クワチャ(約500円)へと2倍に上がった。

ザンビア料理に欠かせない食用油の値段(5リットル)も、9月は149クワチャ(約730円)だったが、11月は179.99クワチャ(約890円)に1.2倍になった。

クワチャの価値は2020年の1年間で急落した。2016年末から2019年までは1ドル10~14クワチャの間で推移してきた。ところが2019年の12月から下がり始め、新型コロナウイルスの感染が広がってきた2020年4月初旬以降は1ドル21クワチャに。ムワンバジさんは「モノの値段は軒並み上がった。生活は厳しくなるばかり」と頭を抱える。

ザンビア統計局によると、2020年11月の食品のインフレ率は16.8%、食品以外のインフレ率は18.2%。調理に使う木炭の値段(1袋)も、9月の45クワチャ(約220円)から11月は85クワチャ(約410円)に跳ね上がった。ガスコンロではなく、電気コンロが主流のザンビアでは、停電したら調理は木炭頼み。毎日10時間停電するいま、木炭の値上げに庶民は悲鳴をあげる。

道路の建設を大統領がアピール

クワチャ安で家計も大変だが、国の財政も危機的状況だ。ザンビアは新型コロナが蔓延した後、アフリカで最初のデフォルト国となった。ザンビア政府は、債権者団体に対して、ドル建ユーロ債(ユーロ債とは、表示通貨国の外で発行される債券全般のこと)の利払い4250万ドル(約45億円)の返済延期を求めていた。だが債権者団体はこれを拒否。11月13日にデフォルトとなった。

「ザンビア政府の債務は、コロナ禍の前から問題視されていた」。これは、国際通貨基金(IMF)が2020年10月22日に配信した動画でのアフリカ局長のコメントだ。

返済できないほどの債務をザンビア政府が抱えた主な理由は、2014年から経済が悪化したことによる。アフリカ2位の生産量を誇り、ザンビアの輸出額の6割(2018年)を占める銅の国際価格の低迷が引き金だ。追い討ちをかけるように、コロナ禍で銅の国際価格は2020年5月、14%下落した。

世界銀行によれば、ザンビアの2000~14年の国民総生産(GDP)成長率は年平均6.8%と順調。2011年には「下位中所得国」(1人当たり国民総所得=GNIが1036~4045ドル)の仲間入りをした。

だが高い経済成長は続かなかった。2014~19年のGDP成長率は年平均3.1%に失速。2019年単年は1.4%に落ち込んだ。

ザンビアは過去に対外債務を軽減されたことがある。政府開発援助(ODA)国別データブック2006によると、ザンビアは2005年4月、「拡大重債務貧困国(HIPC)イニシアティブ」で債務免除の資格を得た。国際機関や日本などのドナー(援助機関・国)は債務を免除した。

だがザンビア政府は2012年にユーロ債を発行。債務をまた増やし始めた。GDPに占める公的債務の比率は増えていく。

多額の借り入れをてこに、ザンビア政府はインフラ開発を推し進めてきた。前回(2016年)の大統領選でルング大統領は「過去5年(2011~16年)で3950キロメートル(関東以北の高速道路全長に匹敵)の道路を建設した」と成果をアピールし、再選した。

再選した後も交通インフラの整備は続く。首都ルサカでは、主要道路が2車線化。高架道路や環状線も敷設され、交通渋滞は緩和された。地方の道も舗装された。同時に借り入れも膨らんだ。

デフォルトの後、ザンビア政府の高官はIMF高官と会談。財政支援を正式に要請した。IMFアフリカ局長らは2020年12月7~9日、ザンビアを訪れ、大統領、財務相、中央銀行総裁らと経済再生計画と資金援助プログラムについて話し合った。ザンビア政府は、IMFに対し、予算の管理や債務の透明性、ガバナンス(統治能力)の向上などに力を注ぐことを強調した。