SDGs採択後初の国政選挙・参院選、自民党は「納税者の理解に資する努力を行いつつODAを拡充する」

0709土屋くんIMG_7628参議院選挙の立候補者のポスター。神奈川県藤沢市で撮影

持続可能な開発目標(SDGs)が2015年9月に国連総会で採択されてから日本で初めての国政選挙・参議院選挙が7月10日に投票日を迎える。有力政党のマニフェストを「政府開発援助(ODA)」「SDGs」「国連」「対アジア」「対アフリカ」「難民・災害」の6つの視点から比べてみた。

自民党は、「国民総所得(GNI)の0.7%をODAに充てる」(現在は0.2%程度)という国際目標を念頭にODAの拡充を掲げる。公明党は、防災やインフラなど日本の強みを生かした災害支援や、シリア難民を留学生として受け入れると約束。民進党は、国連平和維持活動(PKO)法の改正、日本の国連安保理常任理事国入りを目指すとしている。共産党は、従来の経済インフラ中心のODAを批判。支援分野を食料や保健へシフトすべきと訴える。

自民党

自民党は「参議院選挙公約2016」の全11ページ中3ページ弱を割いた経済再生に比べ、外交・防衛はわずか1ページ。ただ、国民の支持や国益を見据えたODAの拡充を強調している。

<ODA>

納税者の理解に資する努力を行いつつ、GNIの0.7%をODAに充てるとの国際目標を念頭にODAを拡充する。新興国を含む途上国の成長を日本の成長に取り込む。国益をより重視した新たな国際協力大綱のもと、ODAを省庁横断的に積極的かつ戦略的に活用し、効果的な開発協力を推進する。

<SDGs>

国際開発目標(持続可能な開発のための2030アジェンダ)の達成に向けて積極的に貢献する。

<国連>

南スーダンPKOに自衛隊を継続的に派遣するほか、司令部要員の派遣、他国部隊へ自衛隊を派遣する。国連改革を推進し、日本の安全保障理事国入りの実現に向けた取り組みを強化する。また、国際機関に対する分担金・拠出金を適切に確保し、その質を高める評価を行う。

<対アジア>

アジアを中心とした国々で、法の支配やグッドガバナンス(良い統治)を実現し、その国の持続的な成長に貢献するため法制度の整備を支援する。

<対アフリカ>

2016年8月のアフリカ初開催となる第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)で人材育成、質の高いインフラ投資、日本企業の技術活用に関する情報を発信する。また2015年に設置したアフリカ経済戦略会議などを活用し、アフリカへの日本企業の投資を促す。

<難民・災害>

災害時の国際緊急援助隊の派遣や緊急人道支援などに積極的に取り組む。その際に必要となる装備を整備し、病院や船などに求められる機能・役割についても検討する。

公明党

公明党は6つの重点政策を掲げる。その中の1つである「安定した平和と繁栄の対外関係」で、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」や「人間の安全保障」の推進を盛り込む。

<ODA>

政府推進本部のもと国際社会、民間企業やNGOなどの多様な主体とともにODAを拡充する。

<SDGs>

「人間中心」「誰一人として取り残されない」といった人間の安全保障の理念を反映させた「持続可能な開発のための 2030アジェンダ(SDGs)」を推進する。 政府推進本部のもと、国際社会、民間企業やNGOとともに、目標達成のためODAの拡充などの取り組みを進める。

<対アジア>

地理的に近く歴史的に深い関係があるアジア太平洋地域とは、地域の平和と発展をともにめざすとの立場から協力を進める。そのため、基本的価値と戦略的利益を共有するパートナー各国との関係を一層強化する。 東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国のインフラ整備と人材育成での協力を強化する。また南西アジア地域との関係を深める。

<難民・災害>

シリア難民などを対象とする留学生受け入れなどを通じた中東地域の安定に寄与する。日本の強みである防災分野や質の高いインフラ輸出などの知見や技術を活かした国際貢献を積極的に進める。

民進党

民進党は「民進党政策集2016」の中の外務防衛の分野で国際協力について触れ、ODAや国際機関と積極的に連携するとしている。

<ODA>

ODAの対GNI比0.7%という国際目標に向け、ODAを拡充させ、貧困削減、持続可能な成長、平和構築、民主化支援などを進め、途上国の発展に寄与する。ODAを活用して官民一体でインフラ輸出を推進。日本が誇る安全性と利便性を極めたシステムを相手国に提供し、経済発展と民生の向上に貢献する。

<SDGs>

「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の目標実現に向けた取り組みをさらに進める。ジカ熱など、世界的な感染症対策について積極的に貢献する。

<国連>

PKO法を改正し、元戦闘員の武装解除・社会復帰や治安部門の改革など、国際平和協力業務の幅を広げる。PKOや災害派遣活動に積極的に参加する。

国連改革を進め、安保理常任理事国入りをめざす。国際エネルギー機関(IEA)、国連食糧農業機関(FAO)などの国際機関と連携・協力し、資源・エネルギー供給国との友好関係を築く。経済外交と積極的な人道支援により、中東諸国との友好関係維持と平和構築に貢献する。

<対アジア>

アジア諸国から、積極的に留学生と高度人材を受け入れ、人事交流を盛んにする。重要性を増すアジア太平洋諸国との関係を強化する。東南アジア諸国の海洋警察力などのキャパシティビルディング(能力向上)を支援しながら、域内諸国との二国間・多国間の安全保障協力・交流を促進していく。

<対アフリカ>

アフリカ諸国との関係強化を含め、資源外交を強化する。

<難民・災害>

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)との連携のもと、世界各地の難民問題への国際的な取り組みを支援する。

共産党

共産党は「力合わせ、未来開く。」という参院選公約パンフレットの中で、自民党政権による経済インフラ中心のODA支出を批判し、食料や教育などをODAの柱とすることを強調する。

<ODA>

日本のODAは経済インフラ分野が半分(2014年)を占め、基礎的な保健に3%、基礎教育にはわずか5%しか充てていない。経済インフラへの偏重を改め、食糧、保健、教育など基礎的生活分野(BHN、29%)や、社会セクターへの支援(17%)をODAの中心にする。

従来のODAは日本の都合を優先してきたので、相手国で期待された目的を十分に達成することができないケースが多い。相手国の主体性を尊重し、住民のニーズに一義的に応えているかどうか、客観的に評価する。その結果を両国で公表し、透明性を確保する。

ODAの基本理念や、ODAに関する国会の責任と権限を明確にし、NGOの関与の仕方とNGOへの支援などを盛り込んだODA基本法を制定する。多数の省庁にまたがったODAの内容や予算は統合・整理し、ODAの実施体制を抜本的に見直す。また、NGOの自立性を尊重しつつ、パートナーとして参加を位置づける体制を整える。

<SDGs>

官庁だけで実施計画を作成するのではなく、現地や国内のNGOが確実に作成のプロセスに参加できるようにすべき。また、省庁が自らの利益にこだわる「縦割り」の対応の寄せ集めに終わることがないような連携を可能にする取り組みを行う。

<対アジア>

南シナ海問題の解決方法は、対話に徹することにある。ASEAN諸国は「南シナ海行動宣言」(DOC)の順守とともに、それを「南シナ海行動規範」(COC)に発展させることを粘り強く追求してきた。今も追求している。日本政府は対話による解決を促す外交努力をすべき。

<対アフリカ>

日本政府は1993年以降、アフリカの開発をテーマとするTICAD(アフリカ開発会議)を開催してきた。政府は、「経済成長を実現し、その恩恵が貧困層も含めて広く社会に行き渡るような、バランスのとれた安定的な成長を実現する」としているが、非民主的な排除や人権侵害で批判が高まっている政権を後押しする状況となっては、日本の外交・ODAの立場が問われる。現地のステークホルダー(利害関係者)の意見を十分反映させた意思決定での事業の推進が不可欠。

社民党

社民党は参院選特設ページの中で、難民やタックスヘイブン(租税回避地)の問題を取り上げている。しかし開発援助の記述は他党と比べて少ない。

<難民・災害>

「外国人技能実習適正実施法案」「出入国管理・難民認定法改正案」には外国人技能実習制度についての構造的な問題点がある。この撤回を求め、また抜本的に見直す。

人道的見地から難民と難民申請者への医療・公的扶助・在留資格付与・就労許可などの支援措置を講じる。申請・認定・自立のプロセスが円滑に進むようにし、難民条約が遵守されるよう政府を監視する。

<その他>

タックスヘイブン対策を強化するために国際連帯税を導入する。また「パナマ文書」の調査による「税逃れ」の実態を解明する。

おおさか維新の会

おおさか維新の会が国際協力について記述したのは以下の部分だけで少ない。

<対アジア>

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)をてこに東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などの地域経済連携に積極的に参加する。