日本ハビタット協会がケニア西部で「トイレ建設+農業支援」、野外排せつをゼロに!

ケニア西部のホーマベイ県カボンド地区で、トイレの作り方を指導しているところ。写真は、トイレの床部分(コンクリート製)ケニア西部のホーマベイ県カボンド地区で、トイレの作り方を指導しているところ。写真は、トイレの床部分(コンクリート製)

ケニア西部のホーマベイ県カボンド地区で、トイレの普及率100%を目指す国際協力NGOがある。住民が自らトイレを作るための支援をする日本ハビタット協会だ。カボンド地区の家庭のうちトイレがあったのは2016年時点で40〜60%。「使われるトイレ」を作るためのプロジェクトを日本ハビタット協会が進めたところ、野外排せつはほぼゼロに、手洗い場の設置率も21%から86%になった。

あっても使われない!

プロジェクトの名前は「スマイルトイレプロジェクト」。日本ハビタット協会が2016年に始め、2019年8月からは国際協力機構(JICA)の草の根技術協力として実施中だ。プロジェクトの期間は2024年6月まで。ホーマベイ県の地元NGO「SAWA YUME KENYA」がトイレ作りの指導や農業支援で協力する。

日本ハビタット協会が目指すのは、カボンド地区の衛生環境を良くすること。まずは地区内のすべての家庭が「穴掘り式トイレに蓋と手洗い場、囲いのあるトイレ」を設置することが目標だ。

プロジェクトの年間対象地となるのは、カボンド地区の10~15の村。所得が低く、トイレをもたない家庭にアプローチする。

日本ハビタット協会が強くこだわるのは、家庭で使われるトイレを作ること。トイレがあっても、使われないことがざらだからだ。

トイレが使われない理由として日本ハビタット協会の篠原大作事務局長が挙げるのは、足場が不安定で危険であること、囲いがなくてプライバシーがないこと、異臭がすることなど。このため住民は、穴を掘っただけのトイレを避け、川や池などで用を足していた。

篠原氏は「(ケニアの)保健省がトイレを作るよう推奨していたが、住民はトイレの建設知識がなかったため、不衛生で異臭の強いトイレができた。そこで日本ハビタット協会は、使われるトイレの作り方を教える必要があると感じた」と話す。

トイレを作る費用=月収

トイレの作り方の指導を受けるのは、それぞれの村から選ばれた5人だ。彼らがトイレの作り方を学び、その方法を村に広めていく。指導役を務めるのは、SAWA YUME KENYAが雇うトイレ建設指導の専門家だ。

トイレを作るのも、またその費用を負担するのも住民だ。篠原氏は「(オーナーシップを感じてもらうために)住民が自らトイレを作ることが重要。一度作ればやり方がわかるため、故障にも対応できる」と言う。

とはいえ、トイレを作るための費用を払えない人もいる。プロジェクトの対象となる村の住民の平均月収は日本円で5000~7000円。トイレの穴に蓋をつけたり、囲いや手洗い場を設置したりするのに必要な費用も5000〜7000円と同じだ。

加えて、このプロジェクトではLIXILが開発したSATO Pan(開発途上国向け簡易トイレ)の導入も推奨している。

SATO Panの仕組みはこうだ。住民が掘った穴にまず、プラスチック製のSATO Panを設置する。排せつした後に、約200ミリリットルの水を流す。すると、水の重さで蓋(弁)が自動的に閉まる。電気は不要だ。

SATO Panの値段は500円。これに加えて、SATO Panの周りをセメントで固定するために250円かかる。「SATO Panを使うと、蓋があるので臭くない。ハエの侵入も防げる。導入したい住民は多くいる。だが750円が払えないため、SATO Panをもっているのは全家庭の5〜10%にとどまる」(篠原氏)

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