ザンビアとボツワナを結ぶカズングラ橋がオープン、国境通過時間が5日から2時間に

アフリカ第4の大河ザンベジ川に架かるカズングラ橋。ザンビアとボツワナを結ぶ。世界3大瀑布のひとつ「ビクトリアの滝」から61キロメートル上流だ(写真はボツワナ交通通信省のウェブサイトから引用)アフリカ第4の大河ザンベジ川に架かるカズングラ橋。ザンビアとボツワナを結ぶ。世界3大瀑布のひとつ「ビクトリアの滝」から61キロメートル上流だ(写真はボツワナ交通通信省のウェブサイトから引用)

南部アフリカのザンビアとボツワナを結ぶカズングラ橋が5月10日、開通した。ザンビアから南アフリカ共和国のダーバン港へ抜ける2つあるルートのうちの1つで、これまで橋はなかった。ザンビア歳入庁の広報担当者は、5月11日のザンビア国営放送で「ザンベジ川を渡し船で渡っていたときは通関を終えるまでに2〜5日もかかっていた。今後は2時間程度に短くなることを目指す」と語る。

資金は日本のODA、建設は大宇

カズングラ橋は全長923メートル。片側1車線で、両端に歩道もある。真ん中には鉄道が走る予定だ。ボツワナのモセツェとザンビアのリビングストンをつなぐ。

ザンビアとボツワナの国境には、アフリカ第4の大河ザンベジ川が流れる。カズングラ橋が架かる前は、「ポンツーン」と呼ばれる渡し船が唯一の交通手段だった。1日に80〜100台の車両しか川を渡れず、渋滞が慢性化。国境沿いには常にトラックの列が2〜3キロメートル続いていた。

国境を越える時間が短くなるのは、「ワンストップボーダーポイント」と呼ばれる国境管理施設も橋の上に設置したからだ。これまでは、出国と入国の際にそれぞれの国で出入国審査、税関、検疫などの手続きが必要だったが、入国時のみの1回で済むようにした。

時間短縮のメリットはいくつもある。最も期待されるのは、輸送コストの節約だ。国境を通過する時間が短くなれば、トラック運転手の人件費も抑えられる。また農作物を運ぶ場合、鮮度も落ちない。

HIVの蔓延防止にも効果的だ。国境を通過するために何日も待つ必要がなくなれば、トラック運転手を相手にした売春も減るからだ。

カズングラ橋のプロジェクトの総工費は2億5900万ドル(約280億円)。日本の政府開発援助(円借款)とアフリカ開発銀行の協調融資で主にまかなった。

橋の建設工事を受注したのは韓国の大宇建設だ。ワンストップボーダーポイントを建てたのは、ボツワナ側は、中国の中江国際(China Jiangsu International)とボツワナのUnik Construction Engineeringの合弁会社Zhong Gan Engineering Construction。ザンビア側は、中国の安徽省外経建設(Anhui Foreign Economic Construction)だ。

内陸国にとって橋は生命線

カズングラ橋の開通は内陸国のザンビアにとって悲願だった。銅の輸出と南アからの食料品や生活用品の輸入に依存するザンビアにとって、南アのダーバン港への輸送ルートを複数もつことは重要だ。

ボツワナを経由してダーバン港へ行ければ、南アとジンバブエの国境に架かる渋滞がひどいベイツ橋を通らなくて済む。カズングラ橋が開通したことで、ザンビアからボツワナを通ってダーバン港へアクセスしやすくなった。

おもしろいことにカズングラ橋は西に大きくカーブしている。ボツワナとザンビアの領土わずか約300メートルの幅に架けたためだ。

カズングラ橋は当初、直線で全長約700メートルとなる計画だった。直線の場合、ジンバブエの領土を通らないといけない。ところがジンバブエのムガベ大統領(当時)はこの計画に難色。このためジンバブエの領土を避ける形でカーブした橋となった。

カズングラ橋が架かる場所は、ザンビア、ボツワナ、ナミビア、ジンバブエの4カ国の国境が交わる (ウィキメディアコモンズから引用)

カズングラ橋が架かる場所は、ザンビア、ボツワナ、ナミビア、ジンバブエの4カ国の国境が交わる (ウィキメディアコモンズから引用)