セルビアと北マケドニアでスタートアップ企業が熱い! ゲーム・仮想通貨など最先端のICT

アクセラレーションプログラムは2022年秋口に開始予定。日本企業とのマッチング機会の準備が進んでいる

国際協力機構(JICA)と三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)などが、2021年から調査するセルビアと北マケドニアのスタートアップ企業と育成環境の現状と課題についての報告会を開催した。登壇したのは、両国のスタートアップ企業に関わる日本人、セルビア人、北マケドニア人。「セルビアと北マケドニアは投資先として有望だ」と声をそろえた。

小5からプログラミング教育!

セルビアには現在200社を超えるスタートアップ企業がある。その代表格が、サッカーチームの育成シミュレーションゲーム「ノルデウス」を開発したノルデウスや暗号資産のひとつイーサリアムを使ったアプリの開発を支援するプラットフォーム「テンダリー」を提供するテンダリーだ。

スタートアップ企業の発展には、優秀なエンジニアの存在が欠かせない。セルビアではエンジニア人材を育成するためプログラミングの授業が小学5年生から5年間必修だ。セルビア首相府のIT・起業家チーム長は「この国では大学の理工学部を卒業したエンジニアも多い」と説明する。

エンジニアが就職する環境もセルビアにはある。米マイクロソフトは、ソフトウェア開発などをするため従業員1000人規模の拠点を立ち上げた。ドイツの自動車部品・タイヤの大手メーカー、コンチネンタルは研究開発センターをセルビア北部のボイボディナ自治州の州都ノビサドに設置した。

セルビアではまた、進出する外資系企業に対して優遇措置がある。法人税はほぼゼロ。同国でスタートアップ企業を立ち上げた創業者は、一定期間、所得税や社会保険料を払わなくて済む。さらに、セルビアのスタートアップ企業やベンチャーキャピタル(VC)へ投資する個人投資家への税金は免除枠がある。

セルビア首相府のIT・起業家チームのディレクターは「セルビアへは欧州連合(EU)、中国、日本、イスラエル、トルコの人たちはビザなしで受け入れる。セルビアを国際的なIT拠点として発展させていきたい」と語る。

有名映画の3Dクリエイターも

広島市とほぼ同じ、人口200万人の北マケドニアも“隠れたスタートアップ大国”だ。スタ-トアップ支援機関の推定によると、同国にあるスタートアップ企業の数はおよそ300社。多くは首都スコピエに集中している。人工知能(AI)や機械学習など最先端のICT情報通信技術)分野の成長が著しい。

有名映画の3Dを制作するクリエイターが多いのも特徴だ。こうした人材を生かし、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)、3D開発に特化したスタートアップ企業が少なくない。その他に、北マケドニアはウォールナット材の品質の良さで知られることから家具職人が運営するスタートアップ企業もある。

スタートアップ企業に対する北マケドニア政府のバックアップも万全だ。資金面では政府系ファンドのFITDが、主に起業前である“シード期”から起業直後の“アーリー期”にある有望なスタートアップ企業を審査。基準をクリアした企業に出資する。シード期、アーリー期のスタートアップ企業は1万〜10万ドル(約136万~1360万円)の資金援助を受けられる。

北マケドニアでは2006年に、投資家と起業家をつなぐプラットフォーム「スタートアップマケドニア」が始動した。スタートアップマケドニアの共同設立者兼社長代理は「北マケドニアは小さな国だ。自国に十分な市場がないため、国外で市場を見つけることが最初から視野に入っている。アジアでも新しい市場が見つかることを楽しみにしている」と話す。