大型台風の被害を受けたフィリピン中部の漁村、主要輸出品の「海藻」養殖が6割復活!

海藻養殖を営むアルマー村のサラバオさん(写真提供:イカオ・アコ)海藻養殖を営むアルマー村の住民(サラバオさん撮影)

ROIは267%、魚より儲かる!

海藻を養殖する魅力は、早く、低コストで養殖できることだ。

1回の生育に要する期間は約45日。アルマー村では7〜12月、長い時で2月まで養殖するため、1年で最大5回収穫できる。

1本のロープ(約45メートル)から収穫できる海藻は8キログラム程度。20本のロープでは1回で約160キログラムの海藻がとれる。

売り上げは、台風の後の価格高騰を加味すると1万9200ペソ(約4万7000円)になる。これを5回繰り返すため年間では最大9万6000ペソ(約23万5000円)の売り上げが見込める。

養殖の設備もシンプル。潮通しのよい海岸の浅瀬に木や竹の杭を立て、その間に張った糸やロープに苗をくくりつける。次に、浮きとしてペットボトルや発泡スチロールの断片をところどころに取り付ければ完成だ。また、設備費などの初期コスト以外に、メンテナンス代が一収穫期につき約2500ペソ(約6000円)かかるという。

えさ代がかからない海藻養殖の利益率は、アルマー村でも養殖されるミルクフィッシュ(バングス)などと比べても高い。フィリピン農業省によると、海藻の投資利益率(ROI)は267%。ミルクフィッシュの143%を大きく上回る。

フィリピン農業省は、海藻を、ミルクフィッシュやティラピアといったフィリピンを代表する魚と並んで「最重要な水産物」のひとつとしている。とりわけ、海藻から抽出されたカラギナンは、フィリピンの海藻輸出量の94%を占める主要な輸出品。仕向け先は米国、中国、スペイン、ロシア、ベルギーなどだ。

カラギナンの全世界の市場規模は、米国の調査会社グランド・ビュー・リサーチによると、2020年時点で7億8050万ドル(約1127億円)。2020~28年の年間成長率は6%と予測される。

卸価格は2倍、いかに被害が大きいか

「台風の後、海藻の卸売価格は2倍になった。それが今も続いている」。サラバオさんは複雑な表情でこう話を続ける。なぜなら価格の高騰は、再開した農家にとっては喜ばしい半面、ボホール州をはじめとする海藻の主要産地が軒並み、被害にあったことを意味するからだ。

「1キロあたり50〜60ペソ(122〜147円)だった海藻が、今は倍の約120ペソ(約294円)、高い時で130ペソ(約318円)の値がつくようになった」(サラバオさん)

フィリピンの海藻の主要な産地である上位5つの地域のうち3つがオデットの経路にぶつかった。ボホール州もそのひとつだ。また、海藻加工会社の多くは、ボホール州の隣に位置するセブ州に集まっている。

ボホールのほか、ミンダナオ、レイテ、セブ、ネグロス、パラワンを横断したオデットの被害は深刻。国連人道問題調整事務所(OHCA)によると、農業・漁業分野への被害額は2億2900万ドル(約330億円)以上。被害を受けた農家・漁民の数は約39万6500万人にのぼるという。

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