【タイ選挙特集①】三本指を掲げる短髪女子「王室改革訴える前進党が唯一の希望」

三本指をかざす活動家のファー。三本指は民主化を求めるサインで、映画「ハンガーゲーム」から真似したのが始まり。2021年に軍事クーデターが起きたミャンマーにも伝わり、広く使われている三本指をかざす活動家のファー。三本指は民主化を求めるサインで、映画「ハンガーゲーム」から真似したのが始まり。2021年に軍事クーデターが起きたミャンマーにも伝わり、広く使われている

根本的な問題は「国王が国民の上にいること」

ファーが5月の総選挙で期待をかけるのが「前進党」だ。前進党は、2019年に解党された新未来党の後継政党。高学歴ビジネスマンのピタ・リムジャラーンラット氏が党首を務める。

前進党は、財閥の優遇や中央集権、活動家を弾圧するプラユット政権を批判。財閥の独占禁止や民主的な憲法への改正をマニフェストで掲げる。

「前進党は軍政を非難し、センシティブなトピックにも切り込んでいく。私たちの唯一の希望だ」(ファー)

だが今回の選挙で多数を占めると有力視されるのは、同じ野党の「タイ貢献党」だ。同党は、2000年代に熱烈な支持を得たタクシン・シナワット首相の次女、ペートンタン・シナワット氏を首相候補に据える。前進党と同じくクーデターで実権を握ったプラユット首相を批判し、低金利ローンの導入や1万バーツ(約4万円)の仮想通貨の送金といった経済政策で国民の支持を得る。

だがファーは、ペートンタン氏が率いるタイ貢献党を一蹴する。

「タイ貢献党は信用できない。なぜなら王室改革への態度を明らかにしていないからだ」

王室改革とは国王の政治的な影響力を弱めるもので、2020年のデモ以降に叫ばれるようになった。ファーは言う。

「タイの根本的な問題は、国王が国民の上にいること。これが変わらない限り、いつかまた軍政に戻る」(続く

選挙モードに入ったタイ・チェンマイ。路上には各党の選挙ポスターが並ぶ

選挙モードに入ったタイ・チェンマイ。路上には各党の選挙ポスターが並ぶ

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