2008年のデノミから2018年のデノミまで10年間使われたベネズエラの通貨ボリーバルの紙幣。現在は価値がない。1999年から続くチャベス、マドゥロ両政権下では合計3度のデノミを実施。とったゼロの数は合計14個。ここまで経済が破綻して、マドゥロ政権を支持する国民は本当にいるのか米トランプ政権がベネズエラを攻撃し、同国の独裁者・マドゥロ大統領を拘束して3週間。イラン、グリーンランドへと関心がいち早く移ったことで、ベネズエラ報道はあっという間に激減した。これまでの日本の報道(新聞、テレビ)や識者のSNSへの投稿を見る限り、「間違い」が目立つ。ベネズエラとかかわって20年のganas編集長がその理由を考察してみた。
フェイクニュースの数々
まずは代表的な間違いを並べてみる。
1)ベネズエラ国民の大半はマドゥロ政権を支持している。
2)ノーベル平和賞の受賞者で、野党(反体制派)のリーダーであるマリア・コリーナ・マチャド氏は自分のことしか考えていない。米国に毒されている。
3)マドゥロ政権に反対の声を上げるのは米国に情報操作された人だけ(ベネズエラ国民のほんの一部)。
4)ベネズエラではコムナ(地域共同体)が機能していて、ベネズエラ国民は生活に困っていない。
5)ベネズエラは多くの難民を出していない。海外出稼ぎ労働者はいる。
6)ベネズエラ経済が崩壊したのは米国による経済制裁のせいだ(そもそも上と矛盾する内容)。
これらはすべて誤りだ。
ganas編集長は2006~08年の2年にわたってベネズエラで暮らし(当時の連載)、ganasは2012年の創刊以来、数十人のベネズエラ難民を取材してきた。さらにganas編集長は日常的にベネズエラ人とのやりとりをしてきたが、こうした事実はないと断言できる。
フェイクニュースを正す
下に、ベネズエラで起きている事実を箇条書きする。
1)ベネズエラ国民の大半はマドゥロ政権を支持している。
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そもそも、「ベネズエラ政府の関係者」と「何らかの利権を得ている人(エンチュファードと呼ぶ)」以外で、マドゥロ政権を支持する一般市民とganas編集長は会ったことすらない。エンチュファードの中には、政府に便宜を図ってもらっているビジネスマンだけでなく、配給(CLAP)が少しでも欲しいから“マドゥロ政権の支持者”を装う人も含まれる。
ベネズエラ国民の大半がマドゥロ政権を支持しているのであれば、激しい弾圧(拘束・拷問・殺害)をなぜ繰り返すのか。武器も持っておらず、反対意見を言う、またはSNSで投稿するだけの少数派は放っておけばいいはずだ。
ちなみにCLAPがベネズエラ国民の生活を支えているといった情報も誤りだ。配られる頻度をベネズエラ国民に聞けば簡単にわかる。経済がボロボロの状態で、しっかり生活できるレベルの配給を実現できると考えるのはあまりに安易だろう。戦時中の日本もそうだったように。
こう書くと、ベネズエラ国内では「マドゥロ大統領夫妻を返せ」と主張するデモが起きているではないか、という反論が聞こえてきそうだ。だが故チャベス大統領(マドゥロ大統領のボス)の時代から、政府側のデモは「やらせ」というのが定番。デモの参加者にお金や食事を配ったり、参加しないと今ならCLAPを止めると脅したり、デモの場所まで政府がバスを出して運ぶといったやり方は常套手段だった。その現場をganas編集長は実際目にしたこともある。

ベネズエラの首都カラカスを走る地下鉄(2006年撮影)。ベネズエラはかつてはラテンアメリカの中で繁栄していた国。この2年後ぐらいから経済危機が徐々に顕在化していった














