2008年のデノミから2018年のデノミまで10年間使われたベネズエラの通貨ボリーバルの紙幣。現在は価値がない。1999年から続くチャベス、マドゥロ両政権下では合計3度のデノミを実施。とったゼロの数は合計14個。ここまで経済が破綻して、マドゥロ政権を支持する国民は本当にいるのか2)ノーベル平和賞の受賞者で、野党(反体制派)のリーダーであるマリア・コリーナ・マチャド氏は自分のことしか考えていない。米国に毒されている。
↓
「信用できるのはマチャド氏だけ」。これはベネズエラ国民が一様に口にするフレーズだ。数人に聞いてみればいい。
2024年7月の大統領選で何が起きたのかを調べることを勧めたい。
大統領選直前の世論調査ではエドムンド・ゴンサレス氏(マチャド氏の出馬はマドゥロ政権に禁じられたため、代わりにゴンサレス氏を野党統一候補として擁立した)の支持率は83%と、マドゥロ氏の10%を圧倒的にリードしていた。マドゥロ政権による弾圧が日に日に激しくなっていたにもかかわらずだ。
ところがマドゥロ氏の息がかかった選挙管理委員会が発表した結果はマドゥロ氏の勝利(3選)。その後、反対運動が広がったが、マドゥロ政権が激しく拘束・拷問・殺害したのは周知のとおりだ。
米国が裏で操った? 命の危険を冒してまで、どんな見返りを一般市民は得たのか。教えてほしい。
独裁政権下のベネズエラで反政府運動をするのは命懸けだ。中途半端な覚悟ではできない。マチャド氏も国内で身を隠してきた。ゴンサレス氏はスペインに亡命。するとマドゥロ政権はゴンサレス氏の娘の夫を拘束した(今月22日に1年ぶりに釈放)。
元カラカス市長のアントニオ・レデスマ氏はクーデター容疑で逮捕・拘束(最後は自宅軟禁)された。2017年にコロンビアへ劇的な脱出を遂げ、現在はスペインから反政府活動を続けている。
これ以外では、レオポルド・ロペス氏(元チャカオ市長)、マヌエル・ロサレス氏(2006年大統領選の野党統一候補)、エンリケ・カピリレス氏(2012年大統領選の野党統一候補)、フアン・グアイド氏(元国民議会議長)、フリオ・ボルヘス(元国民議会議長)氏らが反体制派のリーダーだった。
しかしその多くは激しい弾圧を受け、亡命するか、マドゥロ政権側に寝返った。もっといえば「沈黙する代わりに、お金を受け取ったのだろう」というのがベネズエラ国民の評価だ。
故チャベス氏が1999年に大統領に就いてから、初期はともかくとして、独裁政権下で長い間、経済崩壊と弾圧に苦しんできたベネズエラ国民。民主的な手段で政権交代を目指してきたが、強権的にことごとく潰されてきたことを忘れてはならない。
きれいごとではなく、ベネズエラの命運を握るのはトランプ大統領しかいない(本人はベネズエラの民主化に興味はないかもしれないが‥‥)。武装組織をもたない反体制派が自力でチャビスタ(マドゥロ政権の中枢にいる人たち)を倒すのは現実として不可能だ。
マチャド氏がトランプ大統領にゴマをするのは「救いの手」を求める手段として当然のこと。これは、追い込まれたベネズエラ国民の民意でもある。
3)マドゥロ政権に反対の声を上げるのは米国に情報操作された人だけ(ベネズエラ国民のほんの一部)。
↓
上でも説明したように、ベネズエラ国民にとっては生活さえままならなくなった現実がある。経済崩壊と弾圧は一般市民にとっては単なる「政治問題」ではない。物理的な生活難に加えて、若者にとってはやりたい仕事にも就けないし、子どもは満足な教育すら受けられない。「夢が奪われた人生」を意味する。
マドゥロ政権を支持する理由はいったいどこにあるのだろう。米国うんぬんは議論のすり替えでしかない。
ちなみに反体制デモが起きたイランの最高指導者ハメネイ師も「トランプ大統領が暴徒を扇動した」と話すなど、マドゥロ政権と同じ言い草をしている。
4)ベネズエラではコムナ(地域共同体)が機能していて、ベネズエラ国民は生活に困っていない。
↓
生活に困らなければ、国民の4分の1(およそ800万人)が母国を去ることはなかった。そもそも1カ月の最低賃金が1ドル(約158円)以下で幸せに生活できるのか、冷静に考えたほうがいい。
ベネズエラのインフレ率はいまだに(2025年で)269%(ピークだった2018年末~19年初めは200万%超)。ベネズエラの通貨ボリーバルは今でも下落し続け、1年前(2025年1月)と比べて6分の1になった(ブラックマーケットのレートで計算すると15分の1に)。
「ミ・ボデガ」というショッピングサイトを見ると、ベネズエラの物価を把握できる。15個入りの卵の値段は3.6ドル(約571円)だ。給料と物価を比べ、それでも生活に困っていないといえるのか。コムナは貧困を打破できるスーパーツール? どうやったらそんなでたらめを信じられるのか不思議だ。
5)ベネズエラは多くの難民を出していない。海外出稼ぎ労働者はいる。
↓
隣国のコロンビアへ行ってみれば一目瞭然。ただベネズエラ人とコロンビア人は見た目で判別するのは難しいので(タイに逃れたミャンマー人と同じ)、話しかける必要がある。驚くほどベネズエラ人が多い。国境の街は言うに及ばず、第2の都市メデジンの繁華街などでも10メートルおきにベネズエラ人が路上でモノを売っている。これが出稼ぎか。彼らを一度でも取材すれば、この間違いは火を見るよりも明らかになる。
6)ベネズエラ経済が崩壊したのは米国による経済制裁のせいだ(そもそも上と矛盾する内容)。
↓
2017年から本格的に始まった米国の経済制裁もベネズエラ経済に大きな打撃を与えているのは事実。ただ重要なのは、ベネズエラ経済が崩壊し始めたのはその前であることだ。
2006年の後半ぐらいから、ブラックマーケットでボリーバルのレートが下がり始め、2007年の後半にはスーパーマーケットの棚から多くのモノが消えた。2008年1月1日にはゼロを3つとるデノミネーションを実施した(その後、2018年、2021年と合計14個のゼロをとった)。
経済崩壊を起こしたのは経済政策の失敗であることは明白だ(具体的な内容はこちらのページの「混迷続くベネズエラの現状」をお読みください。詳しく書いています)。
以上、可能な限りシンプルに説明してみた。いずれもマドゥロ政権の息がかかっていないベネズエラの一般市民と話せばすぐにわかることばかり。フェイクニュースを流す一部の記者や識者はいったいだれに取材したのだろう、ベネズエラにはいつ行って、誰からどんな話を聞いたのだろう。ちなみにベネズエラ政府のアテンドで訪問しても、住民が本音を言えないのは想像に難くない。
ベネズエラ国内で独自取材するのが難しいのなら、コロンビアで暮らす300万人近いベネズエラ難民に話を聞けばいい。そのとき、自分がフェイクニュースを流していたことに気づくかもしれない。














