マドゥロ大統領の排除は「本当に嬉しかった」、国内在住ベネズエラ人の心の叫び

ベネズエラの首都カラカスのスーパーマーケットの前で並ぶ一般市民。外出は極力控え、家を出るのは食料や薬を買うときだけだ

ベネズエラのマドゥロ大統領が米国に排除されて1週間。このニュースは世界中を驚かせたが、肝心のベネズエラ在住の一般市民はこの出来事をどうとらえているのか。複数のベネズエラ人が涙を浮かべながら語ってくれた「一般市民の心情」を掲載する。安全性の観点から身元が割れないよう一部編集した。

まず前提として理解すべきベネズエラの現実を下に箇条書きする。

1)1999年に始まったチャベス、マドゥロ両政権の失政から、世界最悪レベルのインフレ率が十数年にわたって続く(ピークだった2018年末~19年初めは200万%超に。ちなみに大騒ぎの日本のインフレ率は2~3%)

2)ベネズエラの通貨ボリーバルが依然として下落し続ける。1年前(2025年1月)のレートは1ドル53 ボリーバルだったが、現在は同325ボリーバルと、1年前と比べて6分の1に。ちなみにブラックマーケットのレートは1ドル800ボリーバルだから、これで計算すると15分の1になる(日本の円安とはレベルが違う)

3)1カ月の最低賃金は1ドル(約150円)以下

4)マドゥロ政権による弾圧で数千人が拘束・殺害されてきた。ベネズエラに表現の自由はない(SNSで自由に発信しているのは国外在住のベネズエラ人ら)

5)困窮や弾圧などから国民のおよそ4分の1(800万人)が国外へ逃れた

「ベネズエラで生きるとはどういうことか、世界中の人たちに知ってもらいたい」と願うベネズエラ在住のベネズエラ人らが語った内容は下のとおり。

「こんなことは起きないと思っていた」

マドゥロ大統領が拘束された、と知ったのは早朝(ベネズエラ時間)だった。スマホを見ると、海外にいる家族や友人、ベネズエラ国内の人たちからたくさんのメッセージが届いていた。信頼できるニュースをすぐに調べ、これが事実であることを確認した。

ベネズエラ国民はずっと絶望的な状況に追いやられ、たくさんの希望が打ち砕かれてきたから、すごく嬉しいニュースだった。私たちにとって、今回の米国の行動は「トンネルの出口を照らす光」のように感じる。再び自由を取り戻し、尊厳をもって生きられることへの期待がある。

チャベス前大統領(マドゥロ氏のボス)が死去したとき(2013年)、独裁政権は終わったと思った。ところが代わってマドゥロ氏が権力を握った。その後、多くの抗議活動が起こり、多くのベネズエラ人が国内の刑務所に送られ、拷問され、殺されていった。路上でも殺害された。

ベネズエラでは2024年7月に大統領選挙があった。ベネズエラにいるのでマドゥロ政権に対するベネズエラ国民の圧倒的な拒絶反応はわかったし、投票記録もあった。マドゥロ氏は明らかに敗北したのに権力の座に居座り続けた。

彼は永遠に権力の座にとどまるだろうと半ば諦めていた。でも捕まった。本当に嬉しい。こんなことは起きないと思っていた。彼が二度と戻ってこないことを願う。

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