2022-04-12

コロナ対応で世界のODAは過去最高に! イタリア34%増・韓国20%増・日本12%増

OECDが収集した速報データによると、先進諸国が新型コロナウイルス危機に見舞われた開発途上国への支援を強化したため、2021年の公的援助機関からの海外援助は、2020年の水準から実質4.4%増の1,790億米ドルとなり、過去最高を更新しました。

2021年にOECD開発援助委員会(DAC)加盟国が提供した政府開発援助(ODA)には、開発途上国に対する新型コロナウイルスのワクチン提供に費やされた63億ドルが含まれており、その金額はODA全体の3.5%に相当します。ワクチン提供に充てられた分を除くと、ODAは2020年と比較して実質0.6%増となりました。

ワクチン向けODAは、開発途上国のワクチン約8億5700万回分に相当します。総額63億ドルのうち、23億ドル(ODA総額の1.3%)は国内供給で余ったため寄付されたワクチン(約3億5700万回分)、35億ドルは開発途上国のために購入されたワクチン、5億ドルは二次費用に充てられました。1カ国を除くすべてのDAC加盟国は、2021年の余剰ワクチン1回分を6.72ドルと評価し、ODAの過大計上がないよう支払いが少ない場合は必要な調整を行うとする、OECDの勧告に従いました。(2021年の余剰ワクチンの寄付の評価に関するOECDの指針と詳細情報 参照)。

DAC加盟諸国は、新型コロナ関連活動に総額187億ドルを支出しており、2021年はODA純額の10.5%を占め、2020年の166億ドル、ODA総額の10.2%を上回りました。

マティアス・コーマンOECD事務総長は、最新データの発表にあたり次のように述べました。「OECD加盟国は今回も、危機的状況にあってもより脆弱な国々と人々への支援を強化する覚悟があることを示した。昨年の取り組みで開発支援はまた大きく前進したが、依然として課題は残されている。ロシアによるウクライナ侵攻に続いて、世界が新たな人道的危機に見舞われる今、食料や主要商品の供給不足と価格上昇によって最も大きな打撃を受けるであろう開発途上国への追加支援を行わなければならない」

2021年のODA総額は、DAC加盟国の国民総所得(GNI)の0.33%に相当し、2020年と変わらず、ODAの対GNI比を0.7%にするという国連の目標を下回っています。新型コロナ危機で各国のGNIの水準が変動していることが、2020年以降の同比率の推移に影響を及ぼしたと考えられます。デンマーク、ドイツ、ルクセンブルク、ノルウェー、スウェーデンのDAC加盟5カ国は、2021年に0.7%目標を達成するか、または上回りました。

2021年にはDAC加盟23カ国でODAが増加しましたが、これは多くの場合、新型コロナ危機で打撃を受けた開発途上国への追加支援によるものです。また、6カ国でODAが減少しました。最も増加したのは、イタリア(34.5%増)、韓国(20.7%増)、スロベニア(19.0%増)、アイルランド(14.8%増)、米国(14.4%増)、ニュージーランド(13.8%増)、スペイン(12.5%増)、日本(12.1%増)、アイスランド(11.7%増)でした。

DACのスザンナ・ムーアヘッド議長は次のように述べました。「パンデミック当初、DAC加盟諸国はODAの維持に努めることを公約した。厳しい財政的、経済的圧力に直面し、さらにそれがウクライナ紛争で悪化する中で、各国は引き続きこの公約を守っている。複数の危機が発生すれば、ODAにも複数の需要が発生する。ODAは、すべてのパートナー国で、紛争により避難を余儀なくされた人々、飢えに苦しむ人々、とりわけ貧しく脆弱な人々、特に最も苦しんでいる女性と子どもたちなど、支援を必要としている人々をサポートしなければならない」

2021年の人道支援は188億ドルに上り、2020年比で実質3.5%増となりました。債務救済は5億4500万ドルという低水準にとどまりました。援助国で受け入れた難民のために支出されたODAは、2021年は93億ドルで、2020年から実質的にほとんど変化せず、ODA全体の5.2%を占めています。いわゆる援助国内難民にかかる費用に使われるODAは、2016年のピーク時には160億ドル、ODA全体の11.0%を占めていましたが、2021年にはほぼ半減しています(実質ベース)。

DAC加盟国からの二国間ODA総額に占める融資と株式投資の割合は、2020年は21%でしたが2021年には19%に下落し、残りは供与として提供されました。この下落は、DAC諸国による二国間借款が、2018年から2020年にかけて実質35%増加した後、2021年にグラント換算で4.6%減少したことによります。二国間ODAに占める借款の割合が最も高かった国は、日本(55%)、韓国(36%)、フランス(23%)です。

ODAは後発開発途上国の対外資金の3分の2以上を占めています。OECD は、DAC 以外の援助国、民間財団からのフローも把握しています。毎年4月にOECDが発表する速報値に続いて、年末には詳細な地域別・部門別の援助の内訳を掲載した最終統計が発表されます。(OECD.StatのDevelopmentにある2020年のODAの内訳を参照)

ODA純額は、ODAの測定が始まった1960年には400億ドル(2020年価格ベース)をわずかに下回っていましたが、その後大部分は実質ベースで着実に増加しています。2008年の世界経済危機の影響を受けたものの、ミレニアム開発目標が合意された2000年以降、実質2倍以上(118%増)になりました。2015年にSDGs(持続可能な開発目標)が採択されてからは、ODA純額は20%上昇しました。

援助データ、関連情報へのリンクは下記の通りです。

2021年ODA統計の詳細
ODAの経年推移を示すインタラクティブチャート
ODAに関する詳細情報(よくある質問、対象国、1960年以降の援助国・援助先の図表を含むOECDの全援助データなど)

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