押さえておきたい2012年の国際協力ニュース(7~9月)

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ganasは、押さえておきたい2012年の国際協力ニュースをまとめました。7~9月の分です。米国で7月に開催された国際エイズ会議が注目を集めました。

【7月】

■アジアの年金受給者、インドやベトナムでは対象者の10分の1のみ

アジア開発銀行(ADB)の報告書によると、高齢化が進むアジアで、高額の年金を少数がもらうより、少額の年金を多くの人がもらう方が社会的に良いという。ところが中国やスリランカ、フィリピンでは受給対象者の4分の1、インドやバングラデシュ、ベトナム、インドネシアでは10分の1しか年金を受け取っていない。

■イスラエル兵が連れ去るパレスチナ人の子ども、年間500~700

パレスチナの人権侵害についての特別報告者リチャード・フォーク氏によると、イスラエル兵士が、パレスチナ人の家を夜中に囲み、手榴弾で攻撃し、子どもを連れ去るのは日常的だという。被害者の数は年間500~700人。拘束された子どもたちは家族との面会も許されない。

■国際エイズ会議、HIVの検査機会を拡大すべき

国際エイズ会議は、エイズ対策資金の動員を各国に訴える「ワシントン宣言」に署名し、閉幕した。HIVに感染しているかどうかを検査できる機会の拡大や母子感染の削減、HIV陽性者に対する差別・偏見の防止などが重点課題として盛り込まれた。

■11年のHIV新規感染者は250万人、半数が若い女性

国連エイズ合同計画(UNAIDS)の報告書によると、11年のHIV陽性者は全世界で3420万人。このうち新規感染者は250万人にとどまった(過去10年で約2割減)。母子感染予防の取り組みが奏功して子どもの新規感染が33万人に減少した半面、新規感染者の約半分を15~24歳の若い女性(120万人)が占めた。

■HIV対策資金、途上国の拠出額がドナーを上回る

11年にHIV・エイズ対策に動員された資金をみると、途上国(低所得国と中所得国)が総額86億ドル(約6700億円、前年比11%増)を拠出し、ドナー(援助国・機関)の援助総額82億ドル(約6400億円、同ほぼ横ばい)を上回った。

■国連ハイレベルパネル、日本からは菅前首相がメンバーに

国連の潘基文(パンギムン)事務総長は、ミレニアム開発目標(MDGs)が目標年を迎える15年以降の開発アジェンダ(ポストMDGs)を検討するハイレベルパネル(HLP)のメンバー26人を発表した。日本からは菅直人前首相が選ばれた。HLPは13年前半に、ポストMDGsについての報告書を国連事務総長に提出する。

■中国とインドのCO2排出量、OECD全体と同レベル

欧州連合(EU)共同研究センターとオランダ環境評価機関の年次報告書によると、世界の二酸化炭素(CO2)排出量は11年、史上最大の340億トンに達した。最大の排出国は中国で、全体の29%。以下、米国(16%)、EU(11%)、インド(6%)、ロシア(5%)、日本(4%)の順。経済協力開発機構(OECD)加盟国の総排出量は世界の3分の1を占めるが、中国とインドを合わせた排出量も同レベル。

■世界防災閣僚会議in東北、「防災主流化」を確認

世界防災会議in東北が仙台市で開催された。議長サマリーには、国際・地域・国レベルのすべての取り組みに「防災」の概念を中心に位置づける必要があること、災害の被害を最小化するために行動すること(強靭な社会の構築)などが盛り込まれた。

■アフリカへの借款、アフリカは今後3年で2兆円

第5回中国・アフリカ協力フォーラムで、中国の胡錦濤国家主席はアフリカ諸国に対し、向こう3年で200億ドル(約1兆9000億円)の借款を供与すると約束した。第3回フォーラム(06年)の50億ドル(約4700億円)、前回(09年)の100億ドル(約9400億円)と倍増ペース。

■国際社会のアフガニスタン支援、15年までに1兆円以上

日本、アフガニスタン両政府は、アフガニスタンに関する東京会合を都内で開いた。アフガニスタンの持続的発展を実現するために国際社会は15年までに総額160億ドル(約1兆1500億円)超を支援すると明記した「東京宣言」を採択した。アフガニスタン政府は、汚職対策をはじめとするガバナンスを改善し、民主化を推進する。

【8月】

■ICCが元ゲリラ指導者に賠償命令、少年兵のリクルートで

少年兵を徴集した罪で禁固14年の有罪判決を受けたコンゴ民主共和国の元ゲリラ指導者に対し、国際刑事裁判所(ICC)は、この元指導者に、元少年兵とその家族らに賠償するよう命じた。賠償金は、犠牲者のための信託基金から拠出される。

■シリアからの国外脱出、8月だけで10万人以上

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、国外に逃れたシリア難民の数が8月だけで10万3416人に達した。シリアで紛争が始まって以来、最多となる数字。シリア難民の数は現時点で、登録を待つシリア人も含め23万5000人以上。

■東アフリカの子どもの成績が悪化、就学率の向上と反比例

ウウェゾの調査によると、タンザニアとウガンダ、ケニアの子どもの就学率は向上したが、国語(英語やスワヒリ語など)と数学の成績が下がっていることがわかった。とりわけ貧困層の子どもの点数が悪い。授業の内容が改善されていないことが原因という。

■メキシコ経済、22年までにブラジルを抜く?

野村ホールディングスのアナリストによると、メキシコの国内総生産(GDP)は2022年までに倍増し、ブラジルを抜き、中南米でトップに出る可能性がある。メキシコの市場開放政策が生産性を押し上げる、というのが理由。向こう10年のGDP成長率見通しは、メキシコの年平均4.75%に対し、ブラジルは同2.75%。

【9月】

■国連総会、「人間の安全保障」を決議

国連総会で、「人間の安全保障」に関する決議が採択された。人間の安全保障とは、恐怖(紛争やテロ)や欠乏(食料不足など)からの脅威を包括的にとらえ、自由を享受する権利のこと。今回の決議を受け、人間の安全保障の概念のさらなる普及と実現への取り組み促進が期待される。

■5歳未満児の死亡数は690万人、90年から半減

国連児童基金(UNICEF)の報告書によると、5歳未満児の死亡数は11年1年で690万人と、90年の1200万人以上からほぼ半減した。ただサブサハラ(サハラ砂漠以南)アフリカと南アジアでは増加傾向。サブサハラ平均では9人に1人が5歳になれない。5歳未満児の死亡数の3割を、コンゴ民主共和国、ナイジェリア、インド、パキスタンの4カ国が占める。

■11年のODA総額は13兆円、国際公約の半分以下

国連のMDGsギャップタスクフォース報告書2012によると、伝統的ドナー(援助)国が供与した11年の援助総額は1335億ドル(約12兆6000億円)だった。国際公約では、ドナー国は、国民総所得(GNI)の0.7%を政府開発援助(ODA)に振り向けなければならず、その場合、ODA総額は3003億ドル(約28兆円)になる。公約と現実の差額は1668億ドル(約15兆7000億円)。

■ポストMDGsのハイレベルパネル、ニューヨークで初会合

ポストMDGsを話し合うハイレベルパネル(HLP)の第1回会合が米ニューヨークで開催された。国連の潘基文(パンギムン)事務総長は「貧困削減や持続可能な開発には、15年以降の開発アジェンダを明確にする必要がある。政治・経済・社会の面で最も弱い層の発言が新しい開発方針を策定する鍵になる」と述べた。

■若者の失業率、北アフリカと中東は「今後数年25%」

国際労働機関(ILO)の報告書によると、世界全体の若者の失業率は17年に12.9%とさらに悪化する見通し(12年は12.7%)。北アフリカと中東の若者の失業率は、今後数年は25% 超で高止まりし、さらに上昇する可能性もあるという。

■気候変動で30年までに1億人死亡? 米NGOが試算

米国のNGO「DARA」は、気候変動に適切な対策を採らない場合、気候変動に起因する災害などで、2030年までに全世界で累計1億人以上が死ぬ、との試算を発表した。世界の国内総生産(GDP)も3.2%押し下げるという。