遺伝子組み換え作物の世界の作付面積=日本の国土の4.5倍、ブラジルなど途上国で急拡大

バイオテクノロジーの普及を進める「国際アグリバイオ事業団」(ISAAA)は2月20日、遺伝子組み換え(GM)作物の2012年の作付け状況を発表した。これによると、全世界の作付面積は前年比6%増の1億7000万ヘクタール。これは、日本の国土のおよそ4.5倍に相当する。GM作物は1996年に商業化され、その当時の作付面積は170万ヘクタールだったが、わずか16年で100倍に拡大した。

GM作物が普及するスピードがとりわけ速いのが途上国だ。途上国の作付面積の増加率は年率11%、面積にして年間870万ヘクタールと、先進国の3%、160万ヘクタールを大きく上回る。GM作物の作付面積の52%をいまや途上国の農地が占め、先進国の48%を超えた。11年は50%だった。

GM作物を栽培する国は現時点で28カ国にまで広がった。内訳は途上国20カ国、先進国8カ国。28カ国の人口は合計40億人で、世界人口の6割をカバーしている。

12年にGM作物を導入した国はスーダンとキューバだ。スーダンは、アフリカのGMコットン(綿花)栽培では、南アフリカ、ブルキナファソ、エジプトに続く4カ国目となった。キューバが栽培するのはGMトウモロコシ。

世界断トツのGM大国は米国だ。12年の作付面積をみても6950万ヘクタールと群を抜く。あらゆる穀物がGMで、13年からは「乾燥耐性をもつトウモロコシ」が世界で初めて導入される。

2位は、南半球最大の穀倉地帯をもつブラジル。作付面積は、日本の国土とほぼ同じ3660万ヘクタールにも及ぶ。前年から21%拡大した。ブラジルではすでに、「虫害抵抗性と除草剤耐性をあわせもつダイズ」の13年からの商業栽培が承認されている。

アジアに目を移すと、インドと中国がそれぞれ1080万ヘクタール、400万ヘクタールにGMコットンを植えた。両国のコットン作付面積に対するGMコットンの比率はインドで93%、中国は80%。またフィリピンでは、ビタミンAを強化したゴールデンライスが規制当局に承認され次第、13~14年から作付けされる見通し。

ISAAA は、GM作物は食料の安全保障や環境保全に貢献していると評価している。その理由として、96年から11年までに「982億ドル(約9兆円)相当の穀物増産を実現したこと」「4億7300万キログラムの農薬の使用量を減らしたこと」などを挙げる。これ以外にも、小規模農家とその家族合計5000万人の貧困を和らげたとしている。GM作物を栽培する農民1730万人の9割が途上国の小農という。