「世界の報道自由度」途上国トップは東ティモール、マレーシアは40ランクアップ

東ティモールの女性たち。東ティモールは2023年5月20日で独立21年を迎えた。Bryan Ross氏撮影(Pixabayから引用)東ティモールの女性たち。東ティモールは2023年5月20日で独立21年を迎えた。Bryan Ross氏撮影(Pixabayから引用)

国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(本部:フランス・パリ)は5月3日、2023年の世界の報道自由度ランキングを発表した。対象となった180カ国・地域のうち途上国トップは東ティモールで、全体で10位に入った。ワーストは前年に続き北朝鮮。マレーシアは22年から順位を40上げ、中央アジアのキルギスは50下げるなど順位の大きな変動もあった。

独立21年でトップ10入り

このランキングは、各国のジャーナリストや人権活動家に国境なき記者団が実施したアンケートをもとに作成したもの。評価基準は「多元性」「メディアの独立性」「多様性」「透明性」「メディア環境と自己検閲」「法的枠組み」「ニュースと情報の生産を支えるインフラ」の7項目。評価が高いほど報道の自由度が「良好」とされる。

東ティモールは、インドネシアの占領を27年にわたって受けた後、2002年に独立した東南アジアで最も若い民主主義国家だ。前年(22年)の17位から7つ順位を上げた。国境なき記者団は「東ティモールでは行政権が大統領と首相に分かれている。その他の権力も均衡を保ったことで、報道の自由が発揮された」と理由を説明する。

途上国で2位に入ったのは南太平洋のサモアで17位だった。前年の45位から順位を28上げた。

飛躍のきっかけとなったのは、21年7月に起きた23年ぶりの政権交代。憲法を改正して報道の自由を制限しようとしたトゥイラエパ首相から、サモア初の女性首相マタアファ氏に変わった。また、地元紙サモアオブザーバーが政府の汚職問題などに果敢に切り込む姿勢も評価された。

3位以下は、ナミビア(22位)、コスタリカ(23位)、モルドバ(28位)が続く。68位だった日本は大きく水を空けられた格好だ。

ワースト3はアジアの社会主義国家

途上国でワーストだった北朝鮮(180位)は、前年に続き全体でも最下位だ。以下、中国、ベトナム、イラン、トルクメニスタン、シリア、エリトリア、ミャンマー、キューバの順。全体のワースト10は、171位のバーレーン以外すべて途上国だった。

この結果について国境なき記者団は「過剰で集中的な権力は報道の自由を妨げる主要な障害だ」と記す。

176位のトルクメニスタンは「世界で最も閉鎖的な国のひとつ」として悪名高い。メディアが報道できるのは、22年まで15年間独裁を敷いたグルバングル・ベルディムハメドフ前大統領を讃え、現政権の方針を支持する内容のみ。息子のセルダール・ベルディムハメドフ氏が22年3月に大統領に就任した後は、検閲と監視がさらに強化されたという。

世界最大の民主主義国家であるインド(166位)も前年から順位を11下げた。モディ首相に近い財閥アダニ・グループが22年末、インドで唯一の独立系テレビ局ニューデリー・テレビジョンを買収。「インドの主要メディアから多元主義が消える」と国境なき記者団は警鐘を鳴らす。

ウクライナへの侵攻を続けるロシアは164位。ロシア国内でのメディアの活動を制限し、22年から順位を9つ下げた。23年1月には、独立系メディアの最大手メドゥーサの国内での活動を事実上禁止した。

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