インドネシアで「無水トイレ」を普及? LIXILがBOPビジネスとしての可能性を調査へ

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建材・住宅設備機器のLIXILと開発コンサルティング会社i-Incubate(東京・新宿)は9月11日、インドネシアを対象にした「循環型無水トイレ」(写真)の普及ビジネスの事業化調査(FS)を始める、と発表した。両社にとってこれはBOP(Base of the Pyramid=低所得者層)ビジネスの一環。国際協力機構(JICA)の「協力準備調査(BOPビジネス連携促進)」に採択され、供与される資金を活用して、事業の可能性を探っていく。

循環型無水トイレとは、トイレの床下に装置を設置し、この中で、し尿を乾燥させ、バクテリアを使って発酵分解するもの。し尿を水で流さないため、汚染を広げず、地下水や川、湖、海を汚さないという利点がある。またにおいもなくなるという。さらに、処理した汚物はコンポスト(堆肥)としての利用も可能。一石三鳥のこのシステムをLIXILは「エコ・サニテーション」と呼ぶ。

人口2億4000万人(世界4位)のインドネシアは、およそ1万8000の島で構成される島しょ国。このため大規模で効率的なインフラの整備は難しい。だが下水道や下水処理施設がなければ、農村であっても土壌や水の汚染につながってしまう。インドネシア全体では、年間600万トンのし尿が未処理のまま川や運河に排出されており、腸チフスや下痢がまん延する大きな要因となっている。毎年4万人以上の5歳未満児が命を落とす、との報告もある。

下水インフラの不備の問題を解決できる可能性を秘めるのがエコ・サニテーションだ。強みは、各家庭にオンサイトで設置できること。衛生的なトイレへのアクセスが向上し、不衛生なし尿処理や野外での用便が減ることで、農村部などの保健衛生状態も改善する。

エコ・サニテーションの実証検証をLIXILはすでに2010年から、ベトナムで、ハノイ建設大学と共同で進めている。日本でも、徳島県勝浦郡上勝町で実証研究を継続中だ。

BOP層は、年収3000ドル(約30万円)以下の人たちを指す。全世界に40億人いるといわれる。BOPビジネスとは、企業利益を追求しながらBOP層の生活向上に寄与することを目的とするもの。