滋賀の女子高生がビジコンで100万円獲得! 東南アジアの「日本語教師不足」に着目

「PalAsia」を発表する滋賀県立守山高校生の4人。PalAsiaでマンガを読むと、スクリーンのように問題が出てきて、答えをクリックすると正解が表示される。写真は、「日本語で『大丈夫です』はなんと言うでしょう?」というベトナム語でのクイズを紹介しているところ(「40億人のためのビジネスアイデアコンテスト」で撮影)「PalAsia」を発表する滋賀県立守山高校生の4人。PalAsiaでマンガを読むと、スクリーンのように問題が出てきて、答えをクリックすると正解が表示される。写真は、「日本語で『大丈夫です』はなんと言うでしょう?」というベトナム語でのクイズを紹介しているところ(「40億人のためのビジネスアイデアコンテスト」で撮影)

世界の日本語学習者の3分の1にあたるおよそ110万人が東南アジアに集中するとされる一方で、不足しているのがその教師だ。東南アジア全域でも1万人弱しかいないとされ、生徒100人に対して日本語教師は1人しかいない計算になる。この現状をビジネスチャンスに変えようとするのは、滋賀県の県立高校に通う女子高校生4人。東南アジアでのマンガ人気に着目して、マンガで日本語を学ぶ学習アプリ「PalAsia(パラジア)」を考案。都内で開かれたビジネスコンテストで優勝し、100万円を獲得した。「教師不足の切り札のひとつになるのでは」と審査員らも期待を寄せる。

■ポップカルチャーが後押し

国際交流基金によると、東南アジアにはおよそ110万人の日本語学習者がいるとされるが、それだけでなく、最近では初等教育にも日本語教育が取り入れられた。ベトナムの首都ハノイ市では、2016年から市内の一部の小学校で第一外国語として日本語が教えられる取り組みが始まった。

日本語の人気が高い背景にあるのは、日本のポップカルチャーが現地の若者のハートをつかんでいることだ。現地の日本語学習者を対象に外務省が行ったアンケート調査では、日本語を勉強する目的は「日本のファッション、ドラマ、音楽、映画、マンガ、アニメをもっと楽しむため」とおよそ半数が答えた。

日本語学者が年々増えている東南アジアだが、日本語教師の少なさは深刻だ。例えば、日本語学習者数が中国に次いで世界で2番目に多いインドネシア。日本語を学習する人の数はおよそ74万人であるのに対して、教師はたったの4500人。生徒に対する教師の割合はおよそ165人に1人だ。東南アジアで2位のタイでも、学習者数およそ17万人に比べて教師の数は1900人ほどと深刻な状況だ。

■滋賀・守山高校の女子生徒が優勝

2018年2月に都内で開かれた「40億人のためのビジネスアイデアコンテスト」。開発コンサルティングを手がけるアイ・シー・ネット(本社:さいたま市中央区)が4年前から主催し、世界におよそ40億人いるBOP層(貧困層)が抱える課題を解決できるビジネスアイデアを募集する大会だ。この決勝で、高校生部門に出場した100人以上を押しのけて優勝に輝いたのは、滋賀県立守山高校に通う女子生徒4人だ。

4人が考案したのは、「PalAsia(パラジア)」と名付けた日本語学習に特化したアプリだ。ダウンロードするとアプリを通して日本のマンガを読むことができる。一番の特徴は、吹き出しに書かれた日本語のセリフをタップすると現地語での訳を表示する仕組みだ。

マンガを読み終えた後は、セリフの意味を問う復習問題を出題。正解するとポイントがもらえて、ポイントを獲得しながら楽しく勉強できる。また気になる日本語があれば、クリックすることで単語帳に登録する機能も備える。さらに、音声でのセリフの読み上げ機能も搭載し、発音も含めた包括的な日本語学習を提供する計画だ。収益源は広告主からの広告料と読者からの課金を想定する。

実は、インターネット上には日本のマンガが翻訳付きで無数にアップロードされている。だが違法なものや、翻訳がいい加減なものも多いという。守山高校のチームは、信頼できる翻訳を載せることで差別化したい考え。ひらがなやカタカナが読めるレベルの東南アジアの日本語学習者をターゲットとし、まずはタイ語やベトナム語版を整備する計画だ。

審査員のアイ・シー・ネットの多田盛弘社長は「非常に斬新なビジネス。経済成長にともなって東南アジアでは学習意欲が伸びている。深刻な教師不足の切り札のひとつになるのでは。ぜひ実現してほしい」と評価した。

受賞した高校生4人に100万円の使い道を4人に聞いたところ、「実際に東南アジアに赴き、現地の現状やニーズを調査するための費用に充てたい。アイデアをさらに改良して具体的なニーズに合わせたアプリにしていきたい」。ただ彼女たちは現在高校3年生。「いまは受験を控えているので、まずは受験勉強に専念し、大学生になってから事業を始めたい」と話した。