【グロフェス2013】貿易をフェアにしない限り貧困はなくならない! フェアトレード・ラベル・ジャパンの中島佳織事務局長が訴え

NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン(FLJ)の中島佳織事務局長NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン(FLJ)の中島佳織事務局長

NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン(FLJ)の中島佳織事務局長は10月6日、都内で開かれた国内最大の国際協力イベント「グローバルフェスタ」(共催:外務省、国際協力機構=JICA、国際協力NGOセンター=JANIC)のサブステージ・プログラム「日常生活の中の海外支援‐フェアトレードって何だろう‐」で講演した。テーマは、国際協力のひとつの形であるフェアトレードの意義と可能性。FLJは、世界共通のフェアトレード認証ラベルの管理と推進を日本で担う団体だ。

中島事務局長は講演で「フェアトレード=寄付というイメージをもっている人は多いかもしれない。だがそれは誤り。購入代金の一部が生産者に払われるのではなく、貿易の段階で“平等にお金が渡る”仕組みを作るのがフェアトレード。生産者が人間らしく暮らしていけるだけの賃金を保障し、それを支払うよう、公正な基準を定めている」と語った。

たとえばコーヒー。世界中で取引されるこの商品は、9割以上が途上国の人たちが生産している。マーケットが大きく、需要が旺盛であるにもかかわらず、生産者らは貧しい生活を強いられているのが実態。その背景には、不平等な貿易の構造がある。

激しく値動きする市場価格は時に、生産者がコーヒーを生産すればするほど赤字に陥るほど暴落する。生産コストさえまかなえない価格でコーヒーがマーケットで取引されることもあるという。中島事務局長は「貿易を平等にするのは当然のこと。貿易をフェアにしない限り、世界から貧困はなくならない」と声を大にした。

フェアトレードの仕組みでは、持続可能な生産と生活に必要な価格が設定されていて、生産者にはそれ以上が必ず支払われるように定められている。これに加えて、取引額に応じて「プレミアム」と呼ばれるお金が、貿易会社から生産者組合に直接支払われる。プレミアムを活用して、生産者らは井戸や学校など、基本的なインフラをコミュニティーに整えることも可能だ。

だがフェアトレードの目的は単に必要なインフラを建てるだけにとどまらない。「生産者らが自分で力をつけ、海外のマーケットと直接交渉できるようにするところに意義がある」と中島事務局長は指摘する。

南米パラグアイでは実際、フェアトレードで手にしたお金で、サトウキビを砂糖に加工する工場を建設した。加工品のほうが当然、原料よりも高値で売れる。フェアトレードは、エンパワーメント(自身の力で問題を解決できる技術・能力を得ること)をベースにした発展につながる可能性を秘めている。

フェアトレードにはまた、環境を守る意味合いもある。なぜなら、取引する商品の条件として、農薬の規制はもちろん、土壌や水源の保全についても基準が設けられているからだ。生産者はその厳しい基準を守らなければならない。中米コスタリカのコーヒー農家は、プレミアムを使って、農家が共同で環境保全に役立つ研修を受けている。

フェアトレードが発達してきた欧州に比べると、日本での浸透度・知名度はまだまだだ。それでも、イオンやスターバックスなどがフェアトレード商品を調達するなど、日本でもその動きは広まりつつある。

中島事務局長は講演の最後に「フェアトレードはしたい人だけがすればいい、といまでも考える人がいる。だが、本来は貿易そのものがフェアになるべきだ」と述べ、利益の配分構造が偏る現在の貿易のあり方に警鐘を鳴らした。(渡辺美乃里)