国際協力NGOパルシックは5月20日、東ティモールの将来を担う若者たちのビジネスを紹介するイベントを開催した。登壇者のひとりで、首都ディリの郊外で野菜栽培や養鶏を営むドミンゴス・ペレイラさん(30)は「農業をビジネスとして成り立たせ、雇用を生み出したい」と語る。
農業で儲けたい
2002年に独立した東ティモールは、歳入の92%(2022年)を石油やガスなどの天然資源から得る収益に依存。モノカルチャー経済から抜け出せない課題を抱える。この現状を打破しようと、東ティモールではいま、若者の起業家が増えている。
そのひとりがペレイラさんだ。ペレイラさんは2020年、出身地であるディリ近郊のヘラで友人とともに農業団体ユース・エンパワーメント・フォー・フューチャー(YEFF)を立ち上げた。YEFFは野菜の栽培や地鶏の飼育、淡水魚の養殖といった事業を手がける。
農作物はディリやヘラの販売店に卸すだけでなく、オンラインで直販する。独自の販売ルートを開拓して売り上げを伸ばし、ヘラの若者や女性の雇用の創出に努める。
「東ティモールは農業セクターが弱い。食品は輸入ものがほとんど。農業で利益を出し、若者を多く雇用する。そんなビジネスモデルを作りたい」(ペレイラさん)
イベントに登壇したもうひとりの若者、ジョアニーニャ・ゴディーニョさん(26)は2021年にディリで「スカイラ・コーヒーショップ」を立ち上げた。コロナ禍での開業だったため最初は苦労したものの、徐々にビジネスを軌道に乗せていった。現在はディリ市内に3店舗を構え、10人のスタッフを雇う。
「東ティモールの若者は大学を出たらみんな公務員になりたがる。でも自分たちで新しい仕事を作り出せる。これを示したかった」
ゴディーニョさんはこう力を込める。
人口の過半数が19歳以下
東ティモール政府は2011年に「東ティモール戦略的開発計画」を策定。2030年までに上位中所得国になることを目指す。だが石油採掘以外の産業は思うように成長しておらず、1人当たりの国民総所得(GNI)をみても2021年で2880ドル(約40万1500円)と、上位中所得国の4000ドル(約55万7700円)はまだ遠い。
そうした中、主要の油田だったバユ・ウンダン油田が2022年12月に稼働停止した。新しい油田の開発のめどはたっていない。このままでは2034年に、これまで積み立ててきた石油基金が底をつくといわれる。
ペレイラさんは「東ティモールは天然資源に依存しすぎだ。経済を自立させるために、若者がもっとイニシアティブをとらなければいけない」と話す。
イベントに登壇したパルシックの伊藤淳子代表理事もこうエールを送る。
「東ティモールの人口の半分以上は19歳以下。若者は希望の光だ。彼らがビジネスを発展させ、雇用を生み出していってほしい」
パルシックは2002年、東ティモールのコーヒー農家を集めて組合を組織した。適正な価格で組合から豆を購入し、農家の収入向上に努めてきた。またカカオをつくるなど作物の多角化も進めているところだ。この夏には、東ティモールでコーヒー豆の収穫や生豆の加工を体験するツアーも企画する。