キーワードは語学力、「ミャンマー人技能実習生」と「日本人留学生」はそっくり?

日本語の授業を熱心に受ける技能実習生たち(ミャンマー・ヤンゴン)日本語の授業を熱心に受ける技能実習生たち(ミャンマー・ヤンゴン)

「(ミャンマー人の)技能実習生にはうるさいって言われちゃいます」。ミャンマー人技能実習生を日本に送り出す機関K&Kサービス(本社:ミャンマー・ヤンゴン)の日本人責任者、山名智規さん(31歳)はこう苦笑する。なぜなら彼は実習生に日本語を習得するようしつこく呼びかけているからだ。

外国人技能実習制度とは、途上国の人が先進国に行って職業上の技能を学び、帰国後にその技能を生かして国の発展に貢献するという制度。K&Kの業務は、日本語を中心とする派遣前訓練を実習生(候補生)に提供することだ。

■月収が2倍に!

実習生の本来の目的は技能の習得だ。しかし、K&Kで訓練中の候補生のひとりは「技能も学びたいけど、もちろん日本語も習得したい」と意気込む。

2011年から経済改革を推し進めるミャンマーには今、外国企業が殺到している。このため英語や日本語を話せる人材は貴重だ。給料をみても、ミャンマーでは一般的な企業に勤めると月収10万~15万チャット(1万~1万5000円)だが、外国語能力が必要な職業の場合は20万~30万チャット(2万〜3万円)と倍に増える。

山名氏も「日本から帰ってくる実習生には給料が少しでも高い職に就いてもらいたい。とにかく日本語が大事」と語学力の重要性に太鼓判を押す。

ミャンマー人技能実習生の外国渡航へのこうした姿勢は、実は日本人留学生に共通する。海外に留学する日本の学生の一部は、留学先で専攻を深めることを目的にする一方で、実質的には英語の習得を目指している。留学経験のある慶應義塾大学の学生は「多角的な視点と価値観を得られることは成果だが、目に見えやすいのは英語力の向上」と語る。高い英語力は日本企業でも求められている。

技能や専門知識を活用できる範囲は限られている。帰国後の人生を考えた時に、その経験を最もダイレクトに生かしやすいのは語学なのだ。

■意外においしい?

技能実習生の大きなメリットのひとつは、学費を払わないで日本語を学べることだ。

ヤンゴンにある日本語学校ACCの学費は3カ月6万チャット(約6000円)。日本語能力検定(JLPT)の1~5級のレベル別のコースがある。

これに対して、ミャンマーの送り出し機関に実習生が払う金額の相場は350~400万チャット(35万~40万円)だが、日本に派遣された後は給料を受け取れる。日本企業からもらう手取りがたとえば1カ月80万~100万チャット(8万~10万円)の場合、家賃を10万〜15万チャット(1万~1万5000円)払っても、5カ月で返済できる計算だ。

実習生になることで、給料をもらいながら日本語を習得できる――。こう考えると、実習生として日本へ行くのも悪くないとの見方ができる。受け入れ先の搾取など、負のイメージも多い技能実習制度。「語学の習得」という観点から、その魅力をもう一度考えるべきかもしれない。