アフリカで増え続ける「児童婚」、2050年は2.5倍の3億1000万人に

国連児童基金(UNICEF)は11月26日、アフリカで「児童婚」を強いられる女子の数が現在の1億2500万人から2050年には3億1000万人に増えるとする報告書を発表した。児童婚とは18歳未満での結婚のこと。途上国の地方で暮らす貧しい家庭の娘が“子ども花嫁”になるケースが多い。

世界では現在、7億人以上の「20~24歳の女性」が18歳未満で結婚した経験をもつ。この17%、数字にして1億2500万人を占めるのがアフリカの女性だ。この3分の1に相当する4000万人以上が15歳未満で結婚している。

報告書によると、20~24歳のアフリカ女性のうち18歳未満で結婚した人の割合は、1990年の44%から現在(2015年)は34%(およそ3人に1人)に低下した。UNICEFの推測では、2050年の割合はこのままのペースだと23%、取り組みが加速されれば16%にまで下がる。

ただアフリカは人口が爆発的に増加している。アフリカの18歳未満の女子の人口は現在2億7500万人だが、2030年には3億6000万人、2050年には1.7倍の4億6500万人に達する見通しだ。こうした事情から、児童婚の「率」は半減できたとしても、「数」の増加は止まらない。

児童婚の現状を地域別にみると、20~24歳の女性の児童婚率が最も高いのはアフリカ(34%)ではなく、南アジアの44%だ。これに続くのが西アフリカ42%、中部アフリカ40%、東アフリカ37%、ラテンアメリカ・カリブ28%、南部アフリカ26%、中東20%、東アジア・大洋州16%、北アフリカ13%、中欧・東欧・独立国家共同体(CIS)10%。

20~24歳の女性で18歳未満で結婚した人の割合を指す地図(UNICE報告書から)

20~24歳の女性で「18歳未満で結婚した人の割合」を国別に示すアフリカの地図(UNICEF報告書から)

アフリカは唯一、児童婚の数の増加が見込まれる地域だ。現状をみても、チャドはいまだに、15歳までに結婚する女子の比率が29%にも上る。マダガスカルでは未成年の女子の28%が結婚しており、また6%が離婚または夫と死別。モーリタニアでは既婚者の未成年女子の6割が10歳以上年上の夫をもつ。このほか、妻を複数もつ夫のもとに嫁いだ“子どもの花嫁”の割合はギニアビサウで3分の1、ブルキナファソで4分の1、ベナンとカメルーンは5分の1となっている。

児童婚が根強く残るのは「子どもが多くて養えないという家庭の経済事情」「教育の欠如など意識的な問題」「古くからの慣習(目的はたとえば未婚で妊娠するリスクを回避するためなど)」といった3つの理由が大きい。児童婚の撲滅を目指すUNICEFはかねて、婚姻可能な年齢を引き上げるよう各国政府に働きかけたり、女子が教育を受けられるよう貧しい家族を経済的に助けたり、成長してから女子を結婚させる「利益」についてコミュニティーに伝えたり、といった取り組みを続けてきた。

児童婚には、妊娠・出産による妊産婦死亡リスクが高まることはもちろん、夫や夫の家族から暴力や虐待、搾取の被害を受けやすくなったり、学校を中退させられたりといった問題がある。UNICEFのアンソニー・レーク事務局長は「(児童婚を強制された女子は)子ども時代を奪われ、将来の可能性を損なわれている。報告書の数字は、児童婚を禁じる緊急性を示している」とコメントする。