【大洋州でGapYear(2)】ポイ捨ての罰金は2000円! だけどごみだらけの観光立国フィジー

フィジー第2の都市であるラウトカの郊外にあるごみ溜め。細い道に約200メートルにわたってごみが捨てられているフィジー第2の都市であるラウトカの郊外にあるごみ溜め。細い道に約200メートルにわたってごみが捨てられている

フィジー・ビチレブ島西部のナンディで生活を始めて約2カ月。嫌でも目につくのが、道に落ちているごみの多さだ。その大半は、飲み終えたジュースのペットボトル、空き缶、食べ終えたお菓子のプラスッチックなど。小さな「ごみ貯め」と化した場所さえ見かける。フィジーの観光資源であるビーチも例外ではない。今回はフィジーのごみ事情について調べてみた。

■「ごみはその辺に捨てろ!」

「フィジーの市街地でごみを捨てれば、40フィジードル(約2000円)の罰金よ」。こう切り出したのは、ナンディに暮らすフィジー系フィジー人(フィジアン)の主婦、ツポウ・キカウさん(39)だ。「だけど、厳しく監視されていないわ」。私も実際、フィジーの人たちが街にごみを捨てるのはよく目にするが、罰金を払っているところや取り締まっているところは見たことがない。

ナンディでフィジアンの友人とアイスクリームを食べていた時のことだ。アイスクリームを食べ終えたが、ごみ箱が見つからなかったので、私はしばらく持って歩くことにした。すると友人が「ごみなんてその辺に捨てろ」と言い出した。それはできないと断ると、「ここはフィジーだ。問題ない」とごみを取り上げられ、道路に投げ捨てられてしまった。ごみのポイ捨てに抵抗がないから、道はプラスチックやペットボトルであふれかえっている。

ナンディではまた、自宅の庭でごみを燃やすのも日常茶飯事。問題なのは、プラスチックや缶といった“燃えないごみ”を庭で燃やし、処理していることだ。

ナンディをはじめ市街地にはごみ収集システムがある。ごみを裏庭で燃やすと言うツポウさんは「うちはごみ収集車の通る場所から遠い(といっても100メートルほど)。だから燃やす方が便利なの。人によっては燃えないごみは、穴を掘って埋めて処理する人もいるわ」と説明する。不法投棄ともいえる処理方法に驚く私に「フィジーでは当たり前よ」とほほ笑んだ。

■ごみの35%は観光客が出す

市街地以外のごみ処理はもっと深刻だ。フィジー第2の都市ラウトカの外れを歩いていた時、ごみが不法投棄されている場所を見つけた。ペットボトルやプラスチックなど生活ごみがほとんどだが、冷蔵庫や炊飯器まである。家電製品にも燃やした形跡があった。

ごみ溜めができる理由について、ラウトカ・ブナト村のごみ処理場で働くペセリ・デイさんは「フィジーのごみ収集システムが作動しているのは市街地だけだ。郊外はごみの量が少ないから管轄ではない」と話す。郊外に住む人は各自でごみを処理しなければならない。そのためごみ溜めスポットが生まれてしまうのだ。

ブナト村にあるごみ処理場はオープンダンプ方式を採用している。なので運ばれたごみは焼却せず、積み立てられていく。ブナト村のごみ処理場は、ラウトカ、ナンディ、離島で排出されたごみを処理する。1日に約70トンのごみが運ばれ、その約35%にあたる18トンがホテルからだ。これは観光客のごみを意味する。

■ごみを拾って週1万5000円!

フィジーにも、ごみを収集・販売して生計を立てるウェストピッカーが存在する。「ウェストピッカーが主に集めているのはペットボトルだね。1週間で300フィジードル(約1万5000円)稼ぐ人もいるよ」とペセリさん。

といっても誰もがごみを自由に拾えるのではない。ウェストピッカーとして登録した人にごみ処理場が許可証を与える、というのが仕組みだ。登録料金は月に20フィジードル(約1000円)。登録者の数は現在22人。最大30人までが登録できる。

ウェストピッカーらが集めたペットボトルは毎週月・火曜日に、ザ コカ・コーラ カンパニーが1キログラム当たり1フィジードル(約50円)で買い取る。「ウェストピッカーの収入はフィジーでは満足すぎるくらいだ。ただ暑い中1日中ごみを拾うのはかなりしんどいはずだよ」とペセリさんは苦笑いだ。

今や年間69万人(2014年)の観光客が訪れ、観光が主要産業であるフィジー。街中や海でこれだけごみが目立てば「汚い」というネガティブなイメージを観光客に与えかねない。私のそんな懸念をよそに「これがフィジー流さ」と笑い飛ばすフィジー人を見ていると、ごみのポイ捨てには「損得で考えない生き方」へのこだわりが垣間見えてきた。