ウガンダに「ソーラーパネル付き屋台」がお目見え、露天商の売り上げ3倍に!

0823名竹さん、ムサナAttachment-1ムサナ・カートでエッグロール販売をするキッザさん。目を引くカートデザインで集客も好調だ(ウガンダ・カンパラ)

東アフリカのウガンダで、販売カート(屋台)の電力を太陽光でまかなって収入を増やそうというビジネスが始まる。その名も「ムサナ(現地語で太陽)・カート」。試験的な実施で売り上げは3倍に増えた。日本人も参加するベンチャー企業が、普及に向けてクラウドファンディングで資金提供を呼び掛けている。

■太陽光で冷蔵庫を回す

ウガンダの首都カンパラ。食べ物から衣服まで生活必需品が何でもそろう市場には10万以上の露天商が並ぶ。その中で、2016年6月に登場した「ムサナ・カート」と書かれた1台の販売カートが異彩を放つ。

5人家族の大黒柱キッザさん(30歳)は、ムサナ・カートを使って、焼き卵に刻んだ野菜を包む「エッグロール」を手作りで販売する。

材料の保管に使う冷蔵庫や照明に必要な電力は、屋根に設置したソーラーパネルでまかなう。8時間でフル充電でき、曇や雨でもわずか光があれば、電力は供給できる。

■賄賂が要らなくなる

「固定費の削減で安定的に収益が増える」。ムサナ・カートを販売するベンチャー企業「ムサナ・カーツ」(本社:ウガンダ・カンパラ)でマーケティング・広報を担当する久保田啓介さん(30歳)はこう話す。

電気代は露天商たちには大きな負担で、1日の売り上げから手元に残る利益はわずかだ。実際、キッザさんも手元に残るのは7ドル(約700円)だけだったが、ムサナ・カートを使った試験的な販売では2倍の14ドル(約1400円)に増えた。

久保田さんによると、カンパラ市議会はこのほど、健全な市場づくりに有効だとしてムサナ・カートを合法的な販売手段と認めた。市場には販売許可をもたない店主も多く、賄賂を払えなければ、グリルや調理器具などを没収されてしまう。「カートを導入すれば、賄賂や設備の買い替えコストも不要になる」(久保田さん)

カンパラに広がるマーケット。密集した中で商売をする

カンパラに広がるマーケット。密集した中で商売をする

■スマホ充電サービスの副業も

ムサナ・カートの効果はコスト削減にとどまらない。キッザさんの場合、売り上げが3倍になった。カートに設置された電源ソケットで、テレビを観られるようにしたところ客足増につながったからだ。今後は、スマートフォンの充電サービスといった副業でさらなる売り上げ増も期待できる。

健康リスクも減った。今のカートの大きさでは、加熱できる強さの太陽光エネルギーは集められないため、ブリケット(豆炭)を使う。以前は石炭を使っていて呼吸器疾患のリスクとは隣合わせだった。

キッザさんがムサナ・カーツに払うカートの利用料は1日3ドル(300円)程度。本来の販売価格は1台750ドル(約7万5000円)だが、ユーザーが払う総額は370ドル(約3万7000円)で、残りはカートの外観に掲載する企業の広告収入などでまかなう。

キッザさんは「毎日ビクビクせず、安心して商売できる。安定した生活で明るい未来が見えてきたよ」と、これまで以上の笑顔で接客する。

■CAMPFIREで資金調達めざす

久保田さんは、実は米国ボストンにある大学院ハルト・インターナショナル・ビジネススクールの学生。世界最大のソーシャルビジネスコンテスト「ハルトプライズ」への出場がムサナ・カート開発の契機だ。

出場にあたり、クラスメートであるウガンダ人のナタリー・ビタテュレーさん(26歳)とフランス人のマノン・ラヴァウドさん(24歳)の3人で起業した。電気代を削減することで露天商の収入を増やそうと思いつき、ナタリーさんが事情に詳しいウガンダから展開し始めた。

販売目標は7年で2万台。3年以内に他の東アフリカ諸国への販路拡大を目指す。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)とも交渉し、難民キャンプでの普及も視野に入れる。

課題は資金繰りだ。目標達成に必要な費用は150万円だが、現在までに調達できたのは40万円。8月27日まで日本でもCAMPFIREでクラウドファンディングを実施する。

「ソーシャルビジネスで、テロや貧困の撲滅に貢献したいという思いが私たちの原点」。久保田さんは資金提供への協力を呼び掛けている。

チーム・ムサナのメンバー。左からマノン・ラヴァウドさん、ナタリー・ビタテュレーさん、久保田啓介さん

チーム・ムサナのメンバー。左からマノン・ラヴァウドさん、ナタリー・ビタテュレーさん、久保田啓介さん