アフリカに残る男性の割礼は「エイズの予防」に有効? マケレレ大の小児神経科医が訴え

ケニア南西部ブンゴマ地域のブムラで「伝統的な割礼」を終えて歩く男児たち。キテンゲと呼ばれる薄い布を上から被る。白色の土を体に塗り、長い歩きに備える男児(7月18日撮影)ケニア南西部ブンゴマ地域のブムラで「伝統的な割礼」を終えて歩く男児たち。キテンゲと呼ばれる薄い布を上から被る。白色の土を体に塗り、長い歩きに備える男児(7月18日撮影)

男性器の一部を切除する「割礼」は東アフリカのケニアやウガンダにもある。伝統的なやり方も残るが、近年は、医者が安全な方法で施術するケースも増えてきた。ウガンダの首都カンパラにあるマケレレ大学の講師で、小児神経科医でもあるリチャード・イドロ氏は「医者による男児の割礼は、性感染症やエイズの予防に有効だ」と話す。

ポスターで「割礼を推奨」

イドロ氏によると、ウガンダ南部のラカイ県でジョンズホプキンス大学が実施した研究調査で、男児の割礼がエイズや性感染症にかかるリスクを減らす、ということがわかったという。「医者による医療的な割礼は、安全を十分に配慮しているため推進すべき」とイドロ氏は主張する。

ケニアやウガンダで普及する医者による男性の割礼は、ペニスの先端の包皮をナイフまたは カミソリで5センチメートルほど切り取る。個人差はあるが、痛みは数日から1週間続くという。現在は麻酔の使用も許されているが、マサイ族など民族によっては、意図的に、麻酔や痛み止めを使わないこともあるという。

ケニアでは6~12歳に割礼をするのが一般的だ。ただ地域によっては生後すぐに割礼をするところもある。医者による男性の割礼は、割礼を受け付ける病院に行くか、自宅に医師を呼んで執り行う。

ウガンダのマケレレ大学病院でも割礼ができる。平日の朝8時から夕方4時半まで受け付けていて、料金は無料。大学病院とはいえ、気軽に診察を受けられるクリニックのような機能をもつ。

マケレレ大学の校内には、男性の割礼を推奨するポスターも張ってある。そこには「エイズや性感染症、陰茎がんになる可能性を減らすというメリットもある」と書いてある。

割礼はお祭り騒ぎ!

男性の割礼は、実は世界保健機関(WHO)のエイズ予防プログラムのひとつにもなっている。国連合同エイズ計画(UNAIDS)は2007年以降、医師のもとで行う男性の医療的な割礼を推奨してきた。WHOによると、東アフリカと南部アフリカだけでも2500万人の男性が医療的な割礼を経験済みだ。

ただ複数のケニア人によると、「男らしさ」を求める風潮から、伝統的な割礼はいまだに残るところもある。ケニア南西部ブンゴマ地域のブムラに住むルヒャ人の男児の割礼は伝統的なやり方で行うため、劇痛を伴うという。

ブムラで生まれ育った女子大生のアンナ・ワンジャラさん(19歳)によると、ブムラの割礼はこんな具合だ。

朝6時、家族や近隣住民に見守られるなか、医師免許をもたない割礼の訓練を受けた大人が、男児のペニスの包皮を切る。そのあと立ったまま、腫れないように出血を処理。処置を終えたあと、男児は一日中横になり、寝たり食べたりして2~3日を過ごす。3日後ぐらいから、割礼の痛みが徐々に和らぎ、歩けるようになる。

歩けるようになると、つぎはブムラ全体でお祭り騒ぎが始まる(動画はこちら)。男児はキテンゲ(布)を上から被り、村中を歩き、歌い、踊りまくる。そのあいだ、道端で出会う隣人たちが男児に食べ物や小遣いを渡してくれる。そして夕方7時までに、男児は帰宅するという。

ウガンダのマケレレ大学の構内に掲載されていた医学的な割礼を推奨するポスター(9月10日撮影)

ウガンダのマケレレ大学の構内に掲載されていた医学的な割礼を推奨するポスター(9月10日撮影)

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