1日でも可能なミャンマーの出家生活、一番の思い出は「スキンヘッドにしたこと」!

IMG_3264 (1)ゾーネインウーさん。 ヤンゴンのシュエダゴンパゴダで

ミャンマーの子どもは10歳をめどに短期間の出家をする。ヤンゴン在住で、東京海洋大学に留学する予定のミャンマー人仏教徒ゾーネインウーさん(22歳)によると、仏教の教えを実行するという意識をもって出家する人もいれば、イベント感覚で出家する人もいるのがミャンマーの短期出家の特徴だという。

期間限定の出家は、短いもので1日、通常は1週間から1カ月だ。兄弟や父親、同級生と一緒に出家する人も少なくない。最も人気の時期は4月の水かけ祭り(ミャンマー正月)の期間だ。

ゾーさんによると、出家して徳を積むことは、ゲームに例えれば、浄土へのXP(経験値)を得るような感覚だという。「みんながお祭りで楽しんでいるときにあえて修行すると、もらえるXPが多くなる。出家する際に準備するのは袈裟くらい。袈裟は友だちから寄進という形で譲り受けることが多い。この場合、結果的にお互いXPを得ることができる」

ゾーさんは11歳のとき、父、弟とともに1週間、出家した。「煩悩を忘れ、年上のお坊さんから知識を得られる機会になった。たくさんの戒律があり、人生の苦労を経験できる場所だ」と建前を話すが、実際の出家生活は違うようだ。「ただ戒律に従うだけで、何もしない。托鉢をして歩き回るけれど、あとはお寺にこもって弟とゲームボーイをしていたよ」と笑う。

ヤンゴンのシンボルである仏塔シュエダゴンパゴダでぶらぶらしていた18歳の少年は9歳の時に出家したと話す。唯一の出家経験である9年前の思い出について「スキンヘッドにしたのが一番わくわくした」。また、友だち4人組でシュエダゴンパゴダに来て写真を撮っていた18歳の少年は「11歳の時に出家した。その時、若いお坊さんと一緒に泳ぎに行ったら、ベテランのお坊さんに怒られたことしか覚えていない」と笑顔で話す。

“楽しいイベント”として出家する人がいる一方で、真剣に出家生活を送る人もいる。10歳、20歳と2度出家したことのある28歳の男性は「出家して本物の仏教徒になれた気がする。短期間の出家はミャンマーの仏教文化の中で不可欠な伝統行事。これからも守っていきたい」と語る。

シュエダゴンパゴダで10~30代の男性20人に、短期間の出家をしたことがあるかを聞いたところ、19人が「ある」と回答。19人中19人全員が「短期間の出家生活は幸せで穏やかな経験だった」と話した。その理由として19人中9人が「親のために徳を積むことができたから」と答えた。上座部仏教の教えでは男子は現世で得を積むことが親孝行につながるとされる。