ミャンマー国軍がロヒンギャ女性を集団レイプ、ヒューマン・ライツ・ウォッチが調査報告

ロヒンギャの少女たち。今回の集団レイプで13歳の少女が犠牲になった報告もある。写真は、マウンドーから南へ約100キロメートルのところにあるシットウエ(ラカイン州の州都)のマドラサ(イスラム学校)で撮影。シットウエのロヒンギャの多くは2012年、仏教徒のアラカンに家を焼き払われた

「ミャンマー国軍の兵士らはロヒンギャの女性・少女をレイプ・輪姦した。ある兵士が女性をレイプしている間、他の兵士がその女性を押さえつけたり、銃口を突きつけ脅したりしたケースもあった」。これは、ミャンマー・ラカイン州北部に暮らすイスラム教徒のベンガル系住民「ロヒンギャ」に対するミャンマー国軍の「掃討作戦」について、国際人権NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)がこのほど発表した調査結果の一節だ。

ロヒンギャを掃討する作戦に国軍が出た直接のきっかけは、ロヒンギャの過激派が2016年10月9日、バングラデシュと隣接するマウンドー(ラカイン州北部)の国境警備隊詰所を襲撃したこと。掃討作戦はこれに対する報復行為との意味合いが強い。

■夫を斧で殺され、さらに3人にも

HRWが複数の被害者から証言を得たところによると、国軍は2016年10月9日~12月中旬、マウンドーの少なくとも9つの村でロヒンギャ女性をレイプ・輪姦した。兵士らは村や家を取り囲み、ロヒンギャを外に集め、男女に分けて拘束。発砲しながら、女性・少女をレイプしていったという。

ロヒンギャの女性(20代)のひとりは「兵士らは女性を1カ所に集めると竹の棒で殴り、軍靴で蹴りつけた。殴る蹴るの後、私のほか、私と同年代の女性15人だけを別のところへ連れて行った。そこで私たちをひとりずつレイプした」とHRWに証言した。

40代のロヒンギャ女性のケースでは、家に入ってきた20人の兵士が女性を庭に連行。兵士が女性の頭にライフル銃をつきつけ、その間に衣服をはぎとり、レイプしたという。「兵士たちは私の目の前で、夫を手斧で殺した。さらに3人の男からレイプされた」

HRWの調査は、2016年12月~2017年1月にバングラデシュに逃れたロヒンギャ28人(女性18人、男性10人)を対象にヒアリングしたもの。28人のうち17人が、兵士がレイプしているところを目撃した、と答えた。また女性18人のうち半数以上の11人がレイプ被害者だった。

■「十分な証拠ない」、ミャンマー政府認めず

ロヒンギャ女性に対する国軍の犯罪行為は「民族」と「宗教」の2つを理由としたものだ、とHRWは見る。その証拠として、被害者の多くがレイプされる際、「このベンガル人女」「このムスリム女」「お前はムスリムだから殺す」「俺たちを殺すためにガキを育てているのだろう。ガキどもも始末してやる」などといった暴言を兵士から浴びせられていたことを指摘する。

ロヒンギャへのレイプ行為を糾弾するのはHRWなどのNGOだけではない。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は2月3日、聞き取りしたロヒンギャ女性101人のうち半数以上がレイプなどの性暴力の被害を受けていた、とする報告書を発表。「広範で計画的に行われていたように思われ、人道に対する罪が犯された可能性が極めて高い」と結論づけた。

ただ、ミャンマー政府は国軍のレイプ行為を認めていない。同国の調査委員会は1月3日、レイプの疑いについて「現地の村人や女性に聞き取りしたところ、法的措置に至る十分な証拠はないことがわかった」とする中間報告書を発表した。これを受けてHRWは「真相を解明するため、独立した国際調査が必要だ」と強く批判する。

一連の掃討作戦でミャンマー国軍は、ロヒンギャの成人男女と子どもへの即決処刑、財産の略奪、少なくとも1500軒の家の焼き討ちなどを行った。これにより、6万9000人以上のロヒンギャがバングラデシュに逃れ、2万3000人がマウンドー郡で国内避難民になったとされる。